オバマ米大統領、キューバ市民に「未来への希望」語る

ハバナ大劇場で演説するオバマ米大統領(22日)

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キューバを公式訪問したオバマ米大統領は22日、首都ハバナの大劇場でテレビ演説し、キューバの「未来への希望」を語った。演説は生中継され、キューバでは異例の出来事となった。現職の米国大統領によるキューバ訪問は88年ぶり。

3日間の歴史的なキューバ訪問を締めくくる演説で、オバマ氏は「冷戦の最後の残骸を埋めてしまうため」キューバにやってきたと述べた。

客席にいたラウル・カストロ国家評議会議長に向けては、米国の脅威を恐れる必要もなければ、「キューバ市民の声」を恐れる人もないと呼びかけた。

大統領は、両国が過去を過去のものにして、「友人として、隣国として、家族として、一緒に」明るい未来に向かっていくべきだ、もはやそういう時期だと述べた。

さらにキューバの人たちには「過去のイデオロギー対立から離れて」、「自分たちは米国に立ち向かう国」と自らを位置づけるのではなく、自分たちは単にキューバなのだと、その自己認識で十分なはずだと語りかけた。

「政治がどうであろうと、人は人で、キューバ人はキューバ人だ」

オバマ大統領の登壇前に客席に現れたカストロ議長。ハバナ大劇場で(22日)

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大統領は、キューバに対する米国の敵対政策を冷戦の残骸と呼び、効果もなければ時代遅れなのだから、変更しなくてはならないと説明。54年間続いてきたキューバへの禁輸措置は解除するべきだと述べると、大きい拍手が起きた。

禁輸解除は両国間の大きな課題だが、解除するには米連邦議会の決議が必要で、多数党の共和党はこれに反対している。

大統領は民主国家・アメリカと社会主義国家・キューバの体制の違いを尊重すると述べ、「アメリカはあなたたちに何も強制しない。大事なのはキューバが市民が選ぶことです」と、アメリカが何か変化を強制することはないと強調した。

しかしその上で大統領は、「ただし歴史の影を取り除いた今、私は自分が何を信じるか言わなくては」と切り出し、すべての人は法の下で平等で、政府を恐れずに自由に意見を表明できる権利があるべきで、自分たちの政府を民主的な選挙で選ぶ権利があるべきだと訴えた。

オバマ氏は「アメリカの仕組みにいろいろ問題はある。経済格差や死刑制度や人種差別など」と認め、しかしこれは一例にすぎず、もっとたくさんの問題点をカストロ議長に指摘されたと苦笑。その上で、「開かれた議論を通じて改善できる」、「民主主義が、問題の解決方法だ」と強調した。

オバマ氏は、米政府が反革命勢力のキューバ上陸を支援したピッグス湾攻撃の年に自分は生まれたと述べ、キューバ危機で「世界は終わりかけた」と言及。「歴史は承知しているが、歴史にとらわれるのはお断りだ」と述べ、両国の厳しい対立の時代を振り返りつつ、アメリカが民主主義を通じて様々な問題を克服してきたからこそ、白人と黒人の両親から生まれた自分が大統領になることができたと述べた。

BBCのタラ・マケルビー・ホワイトハウス担当記者は、物語性のある雄弁で感動的な演説だったと評価。大統領はキューバ市民に冗談を交えながら、民主主義は完璧ではないが最高の政治体制なので民主主義を選ぶように呼びかけたのだと記者は指摘した。

演説の後には、大統領はキューバの主だった反政府活動家たちと私的に会談した。

訪問の最後の日程は、野球観戦だった。

ハバナのラティーノアメリカノ・スタジアムで大統領はカストロ議長と共に、キューバ代表と米メジャーリーグのタンパベイ・レイズとの親善試合を観戦。試合はレイズが4対1で勝った。

両国首脳は試合開始前には、ブリュッセルで起きた連続爆弾攻撃の犠牲者を追悼して、1分間の黙祷を捧げた。

レイズの先発クリス・アーチャー投手と握手するオバマ氏

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オバマ氏はキューバを出発して、アルゼンチンへ向かった。アルゼンチンでは24日が、1976年の軍事クーデーター40周年となる。

南米でも最も強権的な軍事政権が誕生したこのクーデターは、当時の米政府の支援を得て成功したと言われており、一部の団体は大統領訪問に抗議する予定という。