【米政権交代】トランプ氏、「一つの中国」政策終わりを示唆
ドナルド・トランプ次期米大統領は11日、米政府が1979年以来堅持してきた「一つの中国」政策を続けるべきか疑問視する発言をした。米フォックス・ニュースとのインタビューで述べた。
トランプ氏は、「通商を含めて色々なことについて中国と取り引きして合意しない限り、どうして『一つの中国』政策に縛られなきゃならないのか分からない」と述べた。
米国は1979年に台湾と断交して以来、台湾を分離した省とみなす中国の「一国二制度」方針を尊重し、台湾を独立国家として扱うことは避けてきた。これに対してトランプ氏は2日、米大統領や次期大統領としての37年来の慣例を破り、台湾の蔡英文総統と電話で会談。中国はこれに正式抗議したが、トランプ氏はさらに中国の為替政策や南シナ海での活動を批判するツイートを連投した。
トランプ氏はフォックス・ニュースに対して、自分が台湾総統からの電話に出るか出ないか決めるのは、中国政府ではないと強調。
「中国に命令されたくないし、これは僕にかかってきた電話だった。とても素敵な電話だった。短くて。それに、いったいなんでどこかの国が僕に、その電話は受けるなとか言えるんだ? 正直いえば、あの電話をとらないのはとても失礼なことだったと思う」とトランプ氏は述べた。
同じインタビューでトランプ氏はさらに、米大統領選でトランプ氏が勝つようにロシア政府のハッカーが工作していたという米中央情報局(CIA)関係者の評価について、「ばかげていると思う。またしても(大統領選で敗れたことへの民主党の)言い訳だと思う。僕は信じない」と反論した。
9日付の米複数報道によると、CIAはロシア政府が大統領選でトランプ氏を有利にしようと工作していたことについて「強く確信」していると明らかにした。
オバマ大統領は、民主党本部やヒラリー・クリントン氏の選対幹部のメールがハッキングされた問題について、徹底調査するよう命じた。
トランプ氏はフォックス・ニュースに対して、オバマ氏が命じた調査は支持するものの、ロシアだけのせいにするべきではないと指摘。「ロシアなのか中国なのか、どこかでベッドに座ってる人間なのか、まったく分かっていないんだから」と述べた。
大統領や次期大統領が連日受けることが慣例になっている機密情報報告を、これまで数回しか受けていないことについては、「僕は頭がいい。8年間、同じことを同じように聞かされる必要はない」と述べた。
「中国と米国の関係の基盤」 マイケル・ブリストウ、BBC中国アナリスト
中国の対外関係において「一つの中国」政策以上に重要なテーマがあるとは、考えにくい。
中国政府は台湾を自国領の一部と捉え、すべての外交パートナーに対しても、この認識を表明するよう強く求める。
ジミー・カーター元米大統領が1979年に北京に米国大使館を開設する際には、まず台湾と断交しなくてはならなかった。
それ以来、「一つの中国」政策は中国と米国の関係の基盤であり続けた。
これに対してトランプ氏は、「一つの中国」に関する合意が、通商など他の課題での交渉において取引材料のようにして使えると、示唆した。しかし、そのようなことを中国政府が受け入れるなどという状況は想像しがたい。
トランプ氏と台湾の蔡総統との電話会談について、中国はあえて強く反応しなかった。
しかし米国の次期大統領が今後も引き続き、対中政策が間もなく変わると示唆し続けるようなら、中国政府は警戒感を高める一方だろう。