米国や世界各地で数百万人が抗議 トランプ新米大統領に
米国や世界各地で21日、ドナルド・トランプ新米大統領の就任に抗議して数百万人が集まった。一方でトランプ氏は、自分の就任式に集まった人数をマスコミが少なく伝えたと発言。現場の空撮写真が示す様子とは異なる大人数が会場にいたと主張した。
世界600都市以上で行われた抗議行動は主に、トランプ新政権で脅かされると大勢が懸念する女性の権利や平等などを強調するもので、予想を大きく超えた人数が集まった。
前日の就任式と同じワシントンの「ナショナル・モール」公園では、市当局によると50万人以上が集まった。主催者の事前予想は20万人だった。前日の大統領就任式に集まった人数の公式集計はないが、一部の推定では25万人とされているため、この日の抗議がそれを大きく上回ったことになる。
ナショナル・モールからホワイトハウスまでの行進が当初は予定されていたが、途中の経路がすべて抗議に参加する人たちで埋まっていたため、実際の行進はできないほどだった。
ワシントン警察の幹部はAP通信に対して、「人の波があまりに遠くまで続いているので、行進する余地がもうない」と話した。
トランプ新大統領はこの日、国立大聖堂の多宗教・宗派の礼拝に出席した後、バージニア州にある米中央情報局(CIA)本部を訪問。CIA職員約400人を前に、自分はCIAを「1000%」応援していると述べた上で、自分はマスコミと戦争状態にあり、自分と情報機関の間の「もめごと」をマスコミが作り出したが、「実際とは正反対だ」と強調した。
トランプ氏はCIAを前にさらに、自分の就任式に集まった人数についてもマスコミは嘘をつき、実際よりも少なく伝えたと主張。25万人どころか「150万人はいたように見えた」と述べ、写真による証拠とは裏腹に、集まった群衆はワシントン記念碑までナショナル・モールをぎっしり埋めていたと述べた。ワシントン記念碑から見下ろす現場の写真は、そのはるか手前の地点で観衆が途切れている様子を映している。
トランプ氏は、この日の各地の抗議集会については触れなかった。
ワシントンの集会では、女優アメリカ・フェレーラさん、アシュリー・ジャドさん、スカーレット・ヨハンソンさん、映画監督マイケル・ムーアさんなど著名人も参加し、演説した。
ムーア監督は米紙ワシントン・ポストの当日紙面を掲げ、「『トランプが権力の座に』という見出しだが、そうは思わない。権力はここにある。アメリカの過半数はここにいる。僕たちこそがマジョリティだ」と呼びかけた。
歌手のマドンナさんも登壇し、「ええ、激怒してる。ええ、ホワイトハウスを吹き飛ばしたいって何度も思った」と発言。米国の主要テレビ各局が生中継した演説で、米国では放送禁止の罵倒表現を何度か繰り返した。
女優で活動家のアメリカ・フェレーラさんは、「私たちは今日、この国の道徳の核心のために行進する。まさにその道徳的核心に対して、新しい大統領は戦争を繰り広げているので」と強調した。
ワシントン以外でも、シカゴでの約15万人をはじめ、ロサンゼルス、ニューヨーク、シアトル、ボストン、マイアミなど米国約300カ所でそれぞれ数万人から数十万人の群衆が集まり、新大統領に抗議した。
参加者の多くは、ピンク色の毛糸で猫耳をかたどった「プッシー(pussy)帽子」をかぶっていた。「子猫」を意味する「pussy」は女性器を意味する俗語でもあり、トランプ氏がかつてこの表現を使い「女性器をわしづかみにする」と発言していたことへの抗議として、女性たちが抗議のシンボルにしようと呼びかけていた。
米国以外でも抗議集会や行進は開かれ、ロンドン行進の主催者発表では8万人~10万人が参加。英国内ではほかにも、ベルファスト、カーディフ、エジンバラ、リーズ、リバプール、マンチェスター、ブリストルなどで抗議行動が行われた。
オーストラリア、ニュージーランドの各地のほか、複数のアジアの都市、パリ、バルセロナ、ローマ、アムステルダム、ジュネーブ、ブダペスト、プラハ、ベルリンでも、連帯の抗議集会が開かれた。