米軍、シリアへミサイル攻撃 「サリン」使った「化学攻撃」に反応

米海軍は駆逐艦ロスから発射したミサイルの映像を公表した(現地時間7日)

画像提供, AFP

画像説明, 米海軍は駆逐艦ロスから発射したミサイルの映像を公表した(現地時間7日)

ドナルド・トランプ米大統領は6日、シリア空軍基地へのミサイル攻撃を命じたと記者会見で明らかにした。4日にシリア北西部イドリブ県で、反政府勢力支配地区に対して化学兵器の使用が疑われる攻撃があったことを受けての対応という。ホワイトハウス報道官はイドリブ攻撃について、シリア政府が神経ガスのサリンを使用したものと思われると言明した。

トランプ大統領は、4日の爆撃機が出発したシリア空軍基地への攻撃を命じたと会見で述べ、シリア紛争を終わらせるため「すべての文明国」の協力を呼びかけた。

米政府は2014年以来、有志連合を主導してシリア領内のイスラム聖戦主義勢力に対して空爆を実施してきた。しかし、シリア政府軍を標的にしたのは今回が初めて。

国防総省は、アサド政権とシリア軍を支援するロシア政府には、ミサイル攻撃を事前に通知したと説明している。

ロシア政府は米国による攻撃を非難。ドミートリ―・ペスコフ大統領報道官は、「主権国家への侵略行為」と呼んだ。

アサド政権と対立するシリア国民連合は、米政府の攻撃を歓迎。広報担当のアフマド・ラマダン氏はAFP通信に対し、「空爆が続くことを願っている(中略)今回の攻撃は始まりに過ぎないことを期待している」と述べた。

動画説明, 米国防総省は6日、東地中海洋上の米駆逐艦からシリア空軍基地に巡航ミサイルを発射する様子の映像を公表した。

国防総省によると、シリア時間7日午前4時40分(日本時間同日午前10時40分)、東地中海の洋上にいる海軍駆逐艦ポーターと同ロスから、トマホーク巡航ミサイル59発をシリアのシャイラート飛行場へ発射した。米国は、イドリブを攻撃した戦闘機はこの飛行場から出発したものとみている。

標的としたのは飛行場の格納庫、飛行機、保管区域、武器庫、防空システムとレーダーで、「(アサド政権が)二度と化学兵器を使用しないよう抑止」することが爆撃の目的だと国防総省は説明している。

シリア国営テレビは、「アメリカの侵略行為」が「複数のミサイル」でシリア軍基地を標的にしたと表明。これ以上の詳細は明らかにしなかった。

動画説明, トランプ米大統領 シリア空爆発表 「独裁者」が「化学攻撃」と

米南部フロリダ州の私邸「マール・ア・ラーゴ」で会見したトランプ大統領は、シリアのバシャール・アル・アサド大統領は「独裁者」で、「罪のない市民に恐ろしい化学攻撃を実施した」と非難。

「私は今晩、シリアの殺戮と流血を終わらせ、あらゆる種類とあらゆるタイプのテロリズムを終わらせるため、我々と協力するようすべての文明国に呼びかける」とトランプ氏は述べ、「アメリカが正義のために闘い続ける限り、最後には平和と調和が勝つと我々は信じている」と強調した。

シリア・イドリブでの攻撃では、子供を含む多数の市民が死傷。呼吸困難や瞳孔の縮小、口から泡を吹くなど、化学兵器攻撃を疑わせる症状を見せていたと現地目撃者は話している。

この攻撃を受けてトランプ大統領はシリア政府を非難し、「何かが起きるべきだ」と警告していた。

動画説明, 「うちの子たちが何をした」 シリア空爆で家族22人を失った父親

ホワイトハウスでは報道官が、米軍巡航ミサイルの標的は「恐ろしい化学兵器攻撃と直接結びついている」と発言。

「我々は相当の確信をもって、今週初めの化学兵器攻撃はこの場所から、アサド政権の命令下にある」飛行機によって実施されたものと「判断している」と報道官は述べた。

さらに、ホワイトハウス報道官は「同じようなレベルの確信をもって、この攻撃でアサド政権が、サリンと同じ特徴の神経ガスを使用したと我々は判断する」と言明した。

Aerial image of Shayrat airfield

画像提供, Reuters

画像説明, 米国防総省は、シリア西部ホムスに近いシャイラート飛行場の空撮写真を公開した

ミサイル攻撃に先立ち6日、レックス・ティラーソン米国務長官は、アサド大統領はシリアの将来において何の役割も持つべきではないと言明。トランプ政権がシリアについて、いきなり方針転換した様子をうかがわせる発言だった。

トランプ政権のニッキー・ヘイリー国連大使は、アサド大統領追放はもはや米国の優先課題ではないと先週述べたばかりだった。

動画説明, 米国務長官、シリア大統領退陣の必要性に言及
Grey line

<解説> ジョン・ソープルBBC北米編集長

政策がこれほど大幅かつすぐに変わるのは珍しいし、これほど速やかに実施されるのも珍しい。

トランプ大統領が就任した時、シリアの大統領は過激派組織のいわゆる「イスラム国」との戦いで役に立つ同盟相手だとみられていた。オバマ政権が推進したシリアの体制変化に関する会話は、いっさいストップした。

しかし化学兵器による攻撃が、すべてを変えた。攻撃から2日しないうちに米政府はアサド大統領への立場を変え、標的を特定し、攻撃したのだ。

これが一度きりの単発報復なのか、それともアサド政権に対するもっと腰を据えた対応の始まりなのかは分からない。シリアの強力な同盟国ロシアと、米国の関係が今後どうなるのかも分からない。

Grey line