メイ英首相、解散・総選挙を発表 6月8日に投開票

解散・総選挙を発表するテリーザ・メイ英首相(18日、首相官邸前)
画像説明, 解散・総選挙を発表するテリーザ・メイ英首相(18日、首相官邸前)

英国のテリーザ・メイ首相は18日、下院を解散し6月8日に総選挙を実施すると発表した。欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票の結果を推進するにあたり、英国は国民の信任と強い指導体制を必要としていると理由を説明した。

首相官邸前で会見したメイ首相は、「国はまとまりつつあるが、ウェストミンスター(英政界)はそうなっていない)」と述べた。

最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、労働党としても選挙を歓迎すると表明。「多数を優先する」政府を実現する機会だと述べた。

下院は19日にも総選挙の可否を採決する。予定されていた2020年より先に総選挙を実施するには、下院の3分の2が賛成しなくてはならない。

選挙の前倒しについて、メイ首相はこれまでそのつもりはないと繰り返していた。方針を逆転させたことについては、「これからの数年間にわたり確実性と安全を確保するには、この選挙を実施するしかほかに方法がないと結論するに至った」と説明した。

首相は、野党が「ゲームのように駆け引きをしている」と批判。それが続けば「ブレグジット(英国のEU離脱)の成功を危険にさらし、国を不確実で不安定な状態に陥れてしまう」と述べた。

「だからこそ総選挙が必要で、しかもただちに必要です。EUが交渉姿勢について合意し、詳細な交渉が始まる前という今のこのタイミングでしか、総選挙を実施するチャンスはない」

「このように私が結論したのはつい最近のことで、不承不承ながらの結論です。私が総理大臣になって以来、2020年まで選挙はしないと言い続けてきましたが、これからの数年間にわたり確実性と安全を確保するには、この選挙を実施して、今後必要となる選択について皆さんの支持をお願いするしか、ほかに方法がないと結論するに至った」

メイ首相は、労働党が最終的なブレグジット合意に反対すると圧力をかけたことや、自由民主党が「政府機能が停止するまで追い込む」つもりだと表明したこと、スコットランド国民党(SNP)がブレグジット法案に反対すると主張し、「選挙で選ばれたわけではない」貴族院の議員たちが「ありとあらゆる局面で(政府に)抵抗する」と主張していたことを列挙。

「今の時点で総選挙をしなければ、野党の駆け引きは続き、次回選挙に至る時期にEUとの交渉の重大局面が重なってしまう」と首相は述べ、なぜこのタイミングでの総選挙が必要なのか説明した。

首相報道官によると、メイ首相は17日の時点でエリザベス女王に電話で選挙実施の方針を伝えた。また発表前に閣僚全員の支持を取り付けていたという。

BBC poll of polls
画像説明, 18日現在の各種世論調査平均支持率。保守党が43%、労働党25%、イギリス独立党11%、自由民主党10%、スコットランド国民党5%、緑の党4%。

首相は野党に対して、「自分たちの本気を表したいなら、今がその時です。単に反対のために反対しているのではなく、政治をゲーム扱いしてなどいないと示すなら」と挑戦した。

「選挙実施を明日、可決しましょう。各党それぞれブレグジット計画を提出し、政府案に変わる代替案を提出し、それをもって国民に判断してもらいましょう」

「国が判断を迫られるのはほかでもない、リーダーシップについてです。私を首相にして、国益にかなった強く安定したリーダーシップを選ぶのか、それともジェレミー・コービン率いる不安定な連立政権、国民投票の分裂を復活させたい自由民主党やSNPのニコラ・スタージョンが支える連立政権を選ぶのか」

動画説明, 英国、6月8日に総選挙へ 市民の反応は
Elected and unelected PMs
画像説明, 過去半世紀で英国では首相が24回交代した。その半数は総選挙を経ずに就任した。緑色が、総選挙なしで就任した首相。

これに対してコービン党首は、メイ首相の決断を歓迎し、「多数の利害を優先する政府に投票する機会を国民が得ることになる」と述べた。「多数の利害」とは、住宅「危機」や教育予算、国民健康制度(NHS)、「全員のためにうまく回る経済」などを意味するという。

コービン党首はBBCに対して、「自分はただちに(選挙活動を)開始するし、楽しみにしている。この国の隅々まで、労働党のメッセージを届けて回る。我々はこの選挙を勝ちにいく。今大事なのはそれだけだ」と述べた。

次期首相になるつもりかと問われたコービン氏は、「もし選挙に勝てば、そうだ。この国を変身させ、すべての人に本物の希望を与え、何よりも全員に正義と経済機会を与える国にする」と表明した。

スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相も、SNP党首として選挙を勝ちにいくと宣言。

「首相が解散総選挙を決めたのは、利己的で狭量な党利党略のためだと思う。それでも選挙を決めたことに変わりはなく、おかげで私としてはスコットランドの利益と価値のために立ち上がり、スコットランドを代弁し、スコットランドに勝手な政策を押し付けようとする右翼の保守派に立ち向かうのを、楽しみにしている」とスタージョン氏は述べた。

自由民主党のティム・ファロン党首はツイッターで、「この国の方向性を皆さんが変えるチャンスだ。とんでもないハードブレグジットを避けたいならば。単一市場に残りたいならば。開かれて寛容で団結した英国を望むなら。これがチャンスです。保守党が多数党になるのを防げるのは、自由民主党だけだ」と書いた。