ロンドン警視総監、合意なしブレグジットを懸念 「市民を危険にさらす可能性」

Met Police Commissioner Cressida Dick
画像説明, ディック警視総監は、ブレグジットについて「分からないことすら分かっていないこと」がたくさんあると述べた

ロンドン警視庁のクレシダ・ディック警視総監は27日、イギリスが欧州連合(EU)と離脱条件で合意せずにEUを離脱した場合、一般市民が危険にさらされる可能性があるとの見解を示した。

ディック警視総監は、EUとの合意が定まらないままブレグジット(イギリスのEU離脱)となった場合、イギリスがEUの犯罪者データベースにアクセスできなくなったり、外国からの身柄引き渡しも難しくなったりするかもしれないと話した。

BBCのラジオ番組「Today」に出演したディック氏は、ロンドン警視庁は欧州の警察機関と協議し、緊急時対応計画を調整していると話した。

イギリスは2019年3月29日にEUを離脱する。イギリス議会は2019年1月に、テリーザ・メイ首相がEUと合意した離脱協定の採決を行う予定。

離脱協定には離脱条件のほか、EUとの将来の関係を示した政治宣言が含まれているが、発効には英下院の承認が必要となる。

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メイ首相は先に、EU非加盟国の中で最も包括的な安全保障関係をEUと結びたいと話していた。

ブレグジット後、イギリスは欧州刑事警察機構(ユーロポール)や欧州司法機構(ユーロジャスト)といった法執行機関から脱退するほか、EU加盟国間の容疑者身柄引き渡しを迅速にするための欧州逮捕令状の仕組みからも外れることになる。

政治宣言では、イギリスとEUが既存の協力関係を維持・適合させるための相互協定を結ぶ旨が記されている。

こうした協力関係では、DNAや指紋、渡航記録、指名手配の警告、車両登録情報といったデータのやりとりが優先されるという。

EU側もこうした領域ではイギリスとの協力関係が必要だが、政治宣言に法的拘束力はなく、またさまざまな技術的問題を解決する必要があることも明示されている。

「より遅く、コストはより高く」

ディック警視総監はBBCのラジオ番組「Today」で、現在イギリスとEUの間にある警察活動の協力関係は、様々な「法的道具」の枠組みで成り立っていると説明。ブレグジット後には、別の仕組みで置き換える必要があると話した。

ディック氏は、最終的には「今と非常に似ている」仕組みに落ち着いてもらいたいが、合意なしブレグジットとなった場合は、「短期間での実現は非常に難しく」なるだろうと指摘した。

「迅速に容疑者を逮捕したり、身柄を引き渡したりするために使っている、データベースへのアクセスに使っているものを、いくつか変更しなくてはならないし、できる限り効果的な方法で変えなくてはならない」

「間違いなくコストはかさむし、間違いなく時間はかかるし、もしかしたら、そう、一般市民を危険にさらすかもしれない」

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警視総監はその上で、ロンドン警視庁は国内各地の警察本部と共に、ブレグジット後に欧州との協力関係を維持する最善策を模索していると話した。

また、欧州各国の警察組織とも、国ごとに個別に協議し、協力関係を維持するための緊急対策を練っていることも明らかにした。

「どうやったらそれができるか話し合うことはできるものの、あまりに色々なことが分からないこの状態で、具体的な何かを導入することはできないし、それは不適切だろう」

「それでも同業者と話しをすることはできるし、私と多くの警察幹部は常にそうしている」

「互恵関係」

ディック警視総監の見解は、ブレグジット反対派に歓迎された。ロンドンのサディク・カーン市長は、イギリスがEUを「ドタバタとめちゃくちゃな形」で出ないようにするためにも、2度目の国民投票を行って国民に最終判断を委ねるべきだと主張した。

一方、メイ首相の離脱協定に反対している団体「Stand Up 4 Brexit(ブレグジットのために立ち上がろう)」は、ブレグジット後の新体制が決まるまで既存の治安維持協定を尊重することが、イギリスとEUの「互恵」につながると述べた。

50人以上の保守党議員から支持を得ているというStand Up 4 Brexitは、EU離脱後には各国と個別に2国間協定が締結されるはずだと、「大きな自信」のほどを示した。

英内務省は、離脱協定の一部として野心的で法的拘束力のある国内の安全保障策を提出しているが、イギリスはあらゆる事態に備える必要があるとしている。

内務省の報道官は、「内務省は合意なしブレグジットとなった場合に備え、EU加盟国との他の連携手段を最大限に活用できるよう、関係機関と集中的に連携している」と述べた上で、全国警察本部長評議会(NPCC)が国内各地の警察本部と協議し、対策を練っていることを明らかにした。