ヴェネズエラで「クーデター」失敗か 野党指導者が軍に決起促す

動画説明,

クーデター未遂か「解放運動」か、ヴェネズエラで緊張高まる

ヴェネズエラで30日、野党指導者のフアン・グアイド国民議会議長が、ニコラス・マドゥロ大統領政権の打倒を掲げ、軍に決起を促すとともに、国民にも抗議行動を呼びかけた。大統領は「クーデターは失敗した」と述べた。

この日早朝、グアイド氏が約3分にわたって話をする動画が投稿された。

動画では、グアイド氏が軍服を着た人々の間に立ち、首都カラカスの「勇敢な兵士たち」が同氏を支持してくれていると述べた。

グアイド氏はまた、マドゥロ政権打倒の「最終段階」にあると宣言。「国軍は正しい判断を下した。歴史によって正しい側に立っていると証明される」と述べた。

だがこの日、軍全体がグアイド氏についているようには見受けられなかった。

グアイド氏はさらに、人々に通りに出て政権交代を訴えるよう求めた。

カラカスではこの日、マドゥロ氏とグアイド氏の双方を支持する人々が通りで抗議した。現地で取材しているBBCのギレルモ・オルモ記者は、これまでで最も激しい衝突が見られていると伝えた。

グアイド氏支持者たちは軍の武装車両に向かって投石を繰り返し、軍は催涙弾や放水銃をグアイド氏支持者たちに向けた。

保健省によると、69人のけが人が報告されているという。

この日夕方、マドゥロ氏はテレビを通して演説。軍幹部たちと並んで腰を下ろしたまま、グアイド氏の行動をアメリカの帝国主義によって支援を受けたクーデターと呼び、これに勝利すると述べた。

「(検察当局は)憲法や法の支配、平和の権利に違反したこの重大犯罪を刑事事件として立件する」

さらに、グアイド氏の支持者たちは「少数のグループだ」とし、彼らの計画は失敗したと述べた。

軍幹部たちはマドゥロ氏に従っているとみられる。

米高官「マドゥロ氏は出国準備をしていた」

複数のアメリカ政府関係者によると、マドゥロ氏の側近3人が「(大統領の)辞任は避けられない」としてグアイド氏に同調する姿勢を見せたが、その後、再び大統領支持へと転換したという。

マイク・ポンペオ米国務長官は、マドゥロ氏が同日、航空機でヴェネズエラを出国しキューバに渡る準備をしていたが、ロシアに説得され取りやめたと述べた。ただしポンペオ氏は、証拠は示さなかった。

「滑走路に飛行機を待機させていた。今朝、出国の予定だったと理解している。ロシアがとどまるよう伝えた」とポンペオ氏は米CNNに語った。

一方、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はワシントンで記者団に、ヴェネズエラのヴラディミル・パドリノ国防相、マイケル・モレノ最高裁長官、イバン・ラファエル・エルナンデス・ダラ大統領警護司令官の名前を挙げ、この3人が「全員、マドゥロ氏の辞任で合意した」と述べた。

US National Security Advisor John Bolton

画像提供, EPA

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ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

しかし、パドリノ国防相はこの日、テレビに出演し、マドゥロ氏への忠誠を表明した。

ボルトン氏は、マドゥロ氏の側近3人の離反に関して証拠は示さなかった。エリオット・エイブラムス・ヴェネズエラ特使も同日、ボルトン氏と同じ説明をした。

ヴェネズエラで何が起きている?

ヴェネズエラでは、2018年のマドゥロ氏再選を立法府が違法だと宣言し、グアイド氏が1月に暫定大統領就任を宣言して以降、両者が対立を続けている。

グアイド氏の暫定大統領就任は、アメリカをはじめ約50カ国が承認している。一方、マドゥロ氏はこれを認めず、政権を譲っていない。

An opposition demonstrator holds a large Venezuelan flag amid a large scattered crowd

画像提供, AFP

この日午前にグアイド氏が投稿した動画では、同氏が所属する野党の指導者レオポルド・ロペス氏の姿もあった。ロペス氏は2014年の反政府運動で暴動を引き起こしたとして有罪判決を受け、自宅軟禁状態に置かれている。

ロペス氏は一時、家族と共にチリの外交官住宅に避難していた。しかし、チリのロベルト・アンプエロ外相はツイッターで、この日の夕方、ロペス氏がスペイン大使館に移動したと明かした。

アンプエロ氏は、ロペス氏と妻がスペイン人の子孫であることから、「個人的な決断」をしたと書いている。

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<解説>失敗か、まだ続くのか? ――ケイティー・ワトソン、BBCニュース

30日の出来事はとても劇的だった。しかし、これがヴェネズエラをどう導くのかは不明だ。

グアイド氏はこの日の朝、軍は自分たち側についていると述べ、大胆な行動に出た。自宅軟禁中だった野党指導者のロペス氏がグアイド氏と並んで立っていたのも大きな驚きだった。誰がロペス氏を解放したのか、そしてこの解放からは、軍の政権への忠誠について何がうかがえるのか。

しかし、時間が経っても、ほとんど何も明確になっていない。誰がこの「決起」を呼びかけたのか。グアイド氏が約束している政権交代を成し遂げるには、軍幹部たちを味方につけなくてはならない。だが今のところ、少なくとも公式には、軍はマドゥロ氏に忠誠を誓ったままだ。

状況は混乱している。しかし、この日始めに反政権側が示していた自信は、弱まっているように見える。

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各国の反応は?

  • アメリカのドナルド・トランプ大統領はツイッターで、キューバがマドゥロ政権への支援をすぐに止めない限り、「完全な」禁輸と高度の制裁措置を実施すると述べた。
  • 国連のアントニオ・グテレス事務総長は、双方に衝突回避を求めた。
  • スペインは流血の事態への悪化を懸念し、「いかなる軍のクーデターも支持しない」と表明した。
  • ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は、副大統領や国防相、外相との緊急会議を招集した。ボルソナロ氏はグアイド氏を支持している。
  • コロンビアのイバン・ドゥケ大統領は、ヴェネズエラ軍に対しグアイド氏を支持するよう求めた。
  • ボリビアのエボ・モラレス大統領とキューバのブルノ・ロドリゲス外相は、マドゥロ氏への支持を表明し、今回の出来事を「クーデター」と呼んで非難するメッセージを同氏に送った。
  • 南北米大陸14カ国の外相グループ「リマ・グループ」は5月3日に緊急会議を開くと発表した。