イランの核合意違反、「深刻ではない」 EU外交トップが表明

European Union High Representative for Foreign Affairs Federica Mogherini

画像提供, AFP

画像説明, EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は、核合意は「まだ生きている」との見方を示した

イランが核合意に違反してウラン濃縮を進めていることについて、欧州連合(EU)の外交責任者、フェデリカ・モゲリーニ外交安全保障上級代表は15日、違反は深刻ではなく、後戻りは可能との見解を示した。

イランは5月以降、2015年に結ばれた核合意で定められた上限を超えて、ウランを貯蔵したり濃縮度を高めたりしている。濃縮されたウランは原発燃料として使用するとしているが、核兵器の材料にもなり得る。

制裁強化を否定

モゲリーニ氏はこの日、イラン問題をめぐってブリュッセルで開かれたEU外相理事会の後、記者会見に臨んだ。

同氏は、「我々はイランが後戻りし、完全な順守状態に復帰することを期待する」と表明。「技術的には、これまで(イランが)取った合意違反措置については、違反措置を取ったことは残念だが、後戻りが可能だ」と述べた。

また、核合意当事国の中で、イランの違反を深刻とみている国はないと説明。現状では、経済制裁の強化を検討することはないと話した。

イランと米英の緊張

核合意をめぐっては、アメリカが昨年5月に一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開。同国の経済は大きな打撃を受けている。

イランのウラン濃縮は、この経済制裁に反発する格好で進められている。アメリカ、イランとも譲歩の姿勢は見せず、両国の緊張が高まっている。

今月に入ってからは、イランがEUの制裁に反してシリアに原油を運んでいるとして、イギリスは英領ジブラルタル付近でイランの石油タンカーを拿捕(だほ)した。イランは制裁違反を否定しており、イギリスとの間でも緊張が生じている。

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ジェレミー・ハント英外相は15日のEU外相理事会の前に、核合意を維持する「小さな窓」は開いているとし、「イランが核兵器を開発するまで、まだ1年はある」と語った。

イギリス、フランス、ドイツの3カ国はEU外相理事会前に、このハント氏の発言を支持する共同声明を出した。

さらなる履行停止か

ドナルド・トランプ米大統領による核合意離脱は、核合意の維持に尽力する他の当事国から批判を浴びている。

英紙デイリー・メール日曜版は、流出した駐米イギリス大使のメモをもとに、トランプ氏が核合意を離脱した理由は、バラク・オバマ前大統領に対する悪意だと報じている。

一方のイランは、経済制裁が緩和されなければ、核合意のさらなる履行停止に踏み切る考えを明らかにしている。