北朝鮮、米国は「絶好の機会」を棒に振った 非核化協議を断つと警告

North Korean Vice Minister of Foreign Affairs Choe Son Hui (C) arrives for a press conference at the Melia hotel, following the second US-North Korea summit, in Hanoi, Vietnam, 01 March 2019. EPA/STR

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画像説明, ハノイ会談に同行した崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官。会談終了後の3月1日には異例の記者会見を開いた

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長はアメリカとの非核化協議を中止し、核・ミサイル実験を再開するかもしれない。

崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は首都・平壌で15日、アメリカは2月末のヴェトナム・ハノイでの米朝首脳会談で「絶好の機会」を棒に振ったと外交官に述べた。

2月27日と28日に行なわれた、ドナルド・トランプ米大統領と金委員長との2回目の会談は、何の合意もないまま当初の予定を切り上げて終了した。

北朝鮮は寧辺(ヨンビョン)核施設の廃棄を提示したものの、すべての核施設の非核化が実現しない限り経済制裁は解除できないとするアメリカ側との溝は埋められなかった。

トランプ大統領は直後の記者会見で、「北朝鮮には明確な展望があるが、アメリカが目指しているものとは違う」と述べ、米朝間に隔たりがあったと明かした。

現時点で「何らかの合意文書に署名するのは適切ではない」と判断したという。

北朝鮮の主張

崔外務次官によると、金委員長はアメリカとの今後の協議に関する方針を、近く公式に発表する予定だという。

ロシアのタス通信は、崔氏が「我々は、アメリカ側のいかなる要求に屈するつもりも、そのような交渉に積極的に取り組むつもりもない」と述べ、アメリカは「ギャングのような」立場を取ったと非難したと報じた。

崔氏は、ハノイ会談で北朝鮮が要求したのは、交渉が決裂した後の会見でトランプ大統領が主張したような全面的な制裁解除ではなく、民間の経済と北朝鮮国民の暮らしを妨げている5つの主要な経済制裁の解除だけだったと述べた。

「明白なのは、今回、アメリカ側が絶好の機会を棒に振ったということだ」

「なぜアメリカが異なる内容を発表したのか、私には分からない。我々は全面的な制裁解除は1度も要求しなかった」

アメリカの立場

トランプ大統領とマイク・ポンペオ米国務長官は2月のハノイ会談後の記者会見で、北朝鮮はすべての制裁解除を求めてきたと明確に述べた。

「結局のところ制裁がすべてだった。北朝鮮は制裁の全面解除を求めてきたが、我々はそれはできなかった」と、トランプ氏は合意に至らなかった理由を説明した。

「時には、席を立たなければならないこともある。今回はそういう時だった」

国務省のスティーヴン・ビーガン北朝鮮担当特別代表は米ワシントンで11日、北朝鮮との外交は「まだ非常に活発だ」と述べた。その一方で、ハノイ会談後になんらかの交渉が行なわれたのかについてや、さらなる協議の予定については言及しなかった。

米朝両首脳は昨年6月シンガポールで初対面し、現職米大統領と北朝鮮の最高指導者の歴史的な初会談が実現した。決裂に終わった2回目のハノイ会談後、トランプ大統領は3回目の首脳会談については未定としながらも、将来的には「良い結果」が得られるだろうと楽観的な見方を示した。

<解説>外交の扉は開いたまま――ローラ・ビッカー、BBCソウル特派員

これはつまり、「炎と激怒」の再来を意味するのか? そこまでは行かない。北朝鮮は、この外交戦術をアメリカの反応を引き出そうと期待しているのかもしれない。

トランプ氏は、金委員長に核・ミサイル実験を中止させることができたと、自分の手腕を鼻にかけていた。北朝鮮もそれは承知している。

トランプ氏は「(核・ミサイル)実験がない限り、自分は特に急がない」と言っていた。

両首脳がハノイで合意に至らず、経済制裁が継続されている。この状況で北朝鮮は米大統領を急かして、より良い合意条件を提示して交渉のテーブルに戻らせようとしているのかもしれない。

崔外務次官が金正恩氏とドナルド・トランプ氏の個人的な関係性を相変わらず称賛したことは、注目に値する。つまり、外交の扉はまだ開かれているということだ。その代わりに、崔氏はアメリカを前より頑なにしたと、マイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を非難した。

北朝鮮側にも、ハノイへ往復120時間かけた金委員長の列車の旅は失敗だったと、そう受け止めているだろう強硬派が存在する。今回の北朝鮮側の発表は、トランプ政権と同様に北朝鮮の強硬派に対しても、金委員長の確固たる姿勢を知らしめる意味があった。