英下院、ブレグジット協定を歴史的大差で否決 内閣不信任案の採決へ

Theresa May

画像提供, House of Commons

英議会下院(定数650)は15日夜、イギリスの欧州連合(EU)離脱について英政府がEUとまとめた離脱条件の協定の承認採決を行い、432対202の大差でこれを否決した。

230票差での政府案否決は、英現代政治史において政府にとって最悪。2年以上にわたりブレグジット(イギリスのEU離脱)交渉を行い、協定を取りまとめてきたテリーザ・メイ首相にとっては、大きな敗北となった。

また、これを受けて最大野党・労働党は、政府に対する不信任案を提出した。16日午後7時(日本時間17日午前4時)に投票が行われる予定で、採択されれば総選挙となる可能性がある。

メイ首相の離脱協定では、イギリスは今年3月29日にEUを離脱し、その後21カ月間の移行期間で通商協定などを交渉する計画だった。

イギリスはなお3月29日にEUを離脱する予定だが、協定が否決された今、離脱の方法や時期についての先行きはますます不透明になった。

下院は当初、昨年12月に離脱協定を採決する予定だったが、その時点でも否決の情勢が強まり、政府は採決をいったん延期した。

首相は先週から再開した協定審議で支持を訴えてきたが、協定の内容に反対する議員、2度目の国民投票でEU離脱の是非を問うべきだとする議員、合意なしブレグジットを強行したい議員、そしてEU離脱そのものを取りやめるべきだとする議員などが一丸となり、否決に持ち込んだ。

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採決では、与党・保守党から118人の議員が造反した。一方、労働党議員でメイ首相の協定を支持したのはたった3人だった。

政府提出の法案が大敗した場合、通常は首相が辞任することが多い。

しかしメイ首相は、採決後の声明で、現職に留まることを表明した。

メイ首相は「議会が発言した、政府は傾聴する」と述べ、16日の不信任投票を勝ち残った場合には、超党派の協議でブレグジットを進める意向を示した。続投が決まれば、離脱協定の代替案を21日に下院に提出すると述べた。

首相はさらに、政府の目標はあくまでも秩序ある離脱で、政府の批判勢力が懸念するような、3月29日の離脱期限まで時間切れを目指すことなどあり得ないと強調した。

動画説明, EU離脱協定否決、次は何が起こる?

ブレグジットを推進し、離脱協定に抗議してメイ内閣を辞任したボリス・ジョンソン前外相は、政府は「大方の予想よりも大きい敗北」に見舞われた、メイ首相の離脱協定はもはや「死んだ」と述べた。

ジョンソン氏はさらに、これだけの大差で下院が協定を否決したことで、首相はかえって「強力な委任」を背景にEUと再交渉できるようになると期待を示した。

Chart showing party breakdown of Brexit deal vote
画像説明, EU離脱協定の差決結果。賛成は保守党が196票、労働党からの造反が3票などで、202票にとどまった。一方、反対には保守党から造反した118人が野党勢力に加わり、432票と大差をつけて勝利した

野党側の動きは?

労働党のジェレミー・コービン党首は、下院が「現政権のひどい無能ぶりに評決を下す」機会になると、内閣不信任案を提出した。

16日の議会で不信任決議が可決された場合、政府は14日以内に信任決議を勝ち取る必要がある。それができなければ、少なくとも25営業日以後に総選挙となる。

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一方で労働党のチュカ・ウムンナ議員は、もし総選挙に至らなかった場合、コービン党首は「大多数」の労働党議員が求めるように、EU離脱をめぐる2度目の国民投票の支持に回るべきだと指摘した。

メイ首相と閣外協力している北アイルランドの民主統一党(DUP)のアーリーン・フォスター党首は、DUPは不信任決議でメイ首相を支持すると話した。DUPの議員は10人全員が協定に反対票を投じている。

フォスター党首はBBCに対し、「DUP議員はイギリス全体の最大利益のために」協定を否決したと述べ、その上で「より良い協定確保のため、政府が計画をまとめる猶予を与えたい」と語った。

2度目の国民投票を支持している自由民主党の党首サー・ヴィンス・ケーブルは、メイ首相の大敗は「ブレグジット中止の始まり」だと述べた一方、コービン氏の支持がない限り国民投票は実現しないだろうとの見解を示している。

スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は、メイ首相は「歴史的な大敗」を喫したと発言。2度目の国民投票を実施するため、離脱手続きを発動させたリスボン条約50条を一時停止すべきだと、あらためて訴えた。

「これ以上、物事を前に進めるなど、まったく不見識だという段階に達している」

これに対し保守党のローリー・スチュワート法務担当閣外相は、2度目の国民投票を含め、保守党の過半数が支持するブレグジット案はひとつもないと話した。

EUの反応は?

欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は、離脱協定が否決されたことで、イギリスが混乱の中でEU離脱を迎える可能性が高まったと指摘した。

動画説明, EUは「イギリスがどうしたいのか知りたい」 ブレグジット協定否決

ユンケル委員長は、否決された離脱協定は「秩序ある離脱を保証する唯一の方法」だったと発言。自分も欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)も、英下院に安心してもらえるよう、「好意から」協定内容をあらためて説明したのだと述べた。

「イギリスには、自分たちがどうしたいのか、早急に意図を明確にしてもらいたい。そろそろ時間切れだ」と委員長は呼びかけた。

また、トゥスク氏はツイッターに「もしこの協定が不可能で、誰も合意なし(ブレグジット)を望んでないとしたら、前向きな解決法はたった一つ。それがいったい何かついに言うのは、勇敢な人は誰なのか?」と投稿した。

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