IOC委員、東京五輪の準備「いつもどおり」  開催是非の判断は5月下旬と

Tokyo Olympic Stadium

画像提供, Reuters

画像説明, 東京五輪のメイン会場となる新国立競技場

新型コロナウイルスの感染が東京五輪の開幕を7月下旬に控える日本でも広まるなか、国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド委員(77)は、五輪の準備は「いつもどおり」だと述べた。さらに、予定通りに東京五輪を開催するかどうかの判断は、5月下旬までする必要がないと話した。

パウンド委員はAP通信の取材で、アスリートたちに引き続き「自分の競技に集中するように」と呼びかけ、「我々全員が知る限り、皆さんは東京に行くことになる」と述べた。

夏季五輪は7月24日に開幕の予定。カナダ出身のパウンド委員は、「必要なら2カ月前に何とかできる。2カ月前には色々なことを始めなくてはならない。警備を強化し、食料や選手村、ホテルを準備し、マスコミはスタジオの設営を始める」と説明。

「これが新しい戦争で、直面しなくてはならない。そのころになったらみんな、こう問わなくてはならなくなるだろう。『自信をもって東京に行けるほど、事態は十分にコントロールされているのか、それともそうではないのか』と」

パウンド委員はさらにBBCラジオに対して、IOCの判断は、世界保健機関(WHO)や各国政府の判断に沿ったものになると述べた。

「我々はスポーツの問題対応はかなり上手だが、パンデミックとなるとそうはいかない」

「海外渡航について、そして渡航を避けるべき場所について、判断はWHOがすることになる。最終的には、日本政府が介入するか、あるいは諸外国の政府が『うちの国民をそこに渡航させたくない』と言い出すかどうか、それ次第になるかもしれない」

パウンド委員は、オリンピック大会の開催中止は「最悪のシナリオ」で、延期や開催地を世界各地に分散させるといった、中止以外の選択肢は、すでに検討されているかもしれないと述べた。

「代替案を考えなくてはならない。年内なら開けるのかどうか。五輪開催に向かう状態をしばらく維持できるのか、日本政府と協議するかもしれない」

「すべてが検討対象だ。大会を分散することも可能だ。たとえば、一部の競技をカナダ、他の競技をイギリスなどで開くといった風に」

委員のこうした発言について、IOCの報道担当は声明で、東京五輪の準備状況を委員が「とても良く」説明したと表明した。

IOC声明はさらに、「東京2020オリンピックは、感染症の発生を注視している全ての関連組織と連携を続け、必要になるかもしれないあらゆる対策を全ての関連組織と検討する。加えて、IOCは自分たちの医療専門家に加え、IOCとも連絡を取り合っている」と説明。

さらにIOCは、「関係当局が、特に日本と中国の当局が、状況対応に必要なあらゆる手段を講じると、全幅の信頼を置いている。それ以外のことは憶測に過ぎない」と述べた。

中国から始まった新型ウイルスの感染拡大は、すでにスポーツ界にも影響を及ぼしている。4月に予定されていたF1シリーズ中国グランプリは延期され、イタリアでもサッカー・セリエAの複数の試合が無観客で行われることになった。アイルランド・ダブリンで3月7日に予定されるラグビー・シックスネイションズ大会のアイルランド対イタリアの試合についても、アイルランド政府は延期を検討している。

日本のサッカーJリーグは3月15日までに予定されていた全公式戦の延期を決定。3月1日に開かれる東京マラソンは本来は一般ランナーも参加する市民マラソンだが、招待選手や記録上の条件を満たした選手のエリートレースのみに限定した。

これとは別に、日本政府は26日、国内のスポーツ・文化イベントの開催を2週間自粛するよう要請する方針を明らかにした。安倍晋三首相が、新型コロナウイルス感染症対策本部で述べた。要請に強制力はなく、主催者の判断にゆだねられるが、政府の専門家会議は24日に感染拡大について、「これから1~2週間が、急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となるという見解を示していた。