トランプ米大統領、反ファシスト「アンティファ」をテロ組織に指定すると発言
ドナルド・トランプ米大統領は5月31日、反ファシズム運動を展開する「Antifa(アンティファ)」をテロ組織に指定すると発言した。トランプ氏は、黒人男性が白人警官に殺害された事件を受けた抗議活動が、アンティファのせいで暴動に発展したと非難している。
ミネソタ州ミネアポリスでは25日、武器を持たない黒人男性ジョージ・フロイドさん(46)がデレック・チョーヴィン警官(44、29日に殺人罪で起訴)に膝で首を9分近く押さえつけられて亡くなった。この事件を受け、アメリカ各地でアフリカ系アメリカ人に対する警察の対応に怒りの声が上がっている。
抗議活動では暴力行為も多発し、各地の大都市で夜間外出禁止令が敷かれた。また、これまでに15州で、州兵が鎮圧に投入されている。アメリカ各州の州兵は、国内の緊急事態に対応するのが任務。
ミネアポリスではフロイドさんの死後、5日にわたって放火や盗難などが横行している。
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なぜ抗議行動が暴動に発展したのか、米政府当局者は大幅に異なる見解をそれぞれ示している。外部のグループや個人の関与を示唆する意見もある。
ミネソタ州のティム・ウォルツ知事(民主党)は30日、外国勢力や白人至上主義者、違法薬物カルテルなどが暴力の背景にいると話したが、詳細は説明しなかった。
一方でトランプ大統領はツイッターで、「アンティファ主導の無政府主義者」や「左翼の無政府主義者」が騒ぎを起こしていると書いているものの、こちらも詳細は明かさなかった。
その上でトランプ氏は、「アメリカ合衆国はアンティファをテロ組織に指定することになる」とツイートした。
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Twitter の投稿の終わり, 1
ただし、アンティファのテロ組織指定をいつ、どのように実施するのかについては説明はなかった。
米政権が特定の団体や個人を外国テロ組織に指定する方法は、法制化や大統領令などいくつかある。
しかし、法曹関係者からは、アンティファに「国内テロ組織」というレッテルを貼る権限が、トランプ氏にあるのかどうか、疑問視する声が出ている。
元司法省高官のメアリー・マコード氏は、「国内組織をテロ組織に指定できる法的権限は現在、存在しない」と説明した。
「そのような指定を追求すれば、合衆国憲法修正第1条に違反する懸念が出てくる」
修正第1条は、表現の自由や平和的集会の権利、信教の自由などを保障している。
一方で、連邦議会の上院では昨年、共和党の議員団が、アンティファを「国内テロリスト」に指定する拘束力のない決議案を提出した。
暴動は誰のせいだと
抗議活動は当初、フロイド氏の死や、アフリカ系アメリカ人に対する警察暴力に怒る市民らが、平和的に市街地を占拠するものだった。
その怒りが加速して暴動に発展したが、その原因ははっきりしていない。
しかしここ数日、連邦当局や各州の高官らは、証拠を示さずに断定的な主張を重ねている。
トランプ大統領は30日に、「アンティファと極左のしわざだ。それ以外の人を責めないように!」とツイートした。
ウィリアム・バー司法長官も大統領に調子を揃え、アンティファなどの「扇動者」らがアメリカ全土に広がる抗議活動をハイジャックしていると批判した。
「アンティファやその他の同じようなグループが扇動し、実行する暴力は国内テロであり、そのように対応する」とバー長官は5月31日に述べた。
一方マイク・ポンペオ国務長官は、それよりも慎重な姿勢をとっている。フォックス・ニュースに出演したポンペオ氏は、暴徒は「アンティファのような」グループだと述べながらも、平和的な抗議がどうやって暴力的なものに変質したのかは、「まだ分からない」と強調した。
ミネソタ州のキース・エリソン司法長官は、ミネアポリス在住ではない人々が、同州で暴力行為に加担している証拠があると述べた。しかし、特定の組織や政治思想と関連があるかどうかは説明しなかった。
このほか、ミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長も、市外の右派勢力が暴力に関わっていると指摘した。
「私たちはいま、この市や地域を破壊し、不安定化させている白人至上主義者、犯罪組織の構成員、州外からの扇動者、あるいはもしかすると外国勢力とも対立している」と語った。
しかし31日、ミネソタ州当局は前日の逮捕者について、州外から来た人は20%ほどだったと発表している。
アンティファとは?
アンティファは「Anti-Fascist Action(反ファシスト活動)」の略語で、ネオナチやファシズム、白人至上主義者、差別主義などに強く反対する抗議活動を指す。指導者などはなく、ゆるやかに連携する活動家たちの集まりだと考えられている。
メンバーの大半があらゆる人種差別、性差別に反対しており、トランプ氏の様々な政策を国粋主義、反移民、反ムスリム的だとして、強く反対している。
一方で反政府主義かつ反資本主義であるため、アンティファのメンバーは主流左派よりも、無政府主義に近いとみなされることが多い。
アメリカでは、2017年8月に米ヴァージニア州シャーロッツヴィルで開催された極右集会に抗議するいわゆる「カウンター」行動が注目され、その名前が知れわたった。
トランプ大統領はこの集会と、それに抗議する人たちの衝突について「双方に非がある」と述べたほか、当初は集会を主催した白人至上主義者を非難しなかったことで、大きな批判を浴びた経緯がある。