米ミズーリ州、新型ウイルス対応めぐり中国を提訴 中国は反発

ジャスティン・ハーパー、ビジネス担当記者

Protesters hold signs encouraging people to demand that businesses be allowed to open up in Kansas City, Missouri.

画像提供, Getty Images

画像説明, 米ミズーリ州カンザスシティでは、住民がロックダウン(都市封鎖)抗議デモを繰り広げた

米ミズーリ州は21日、新型コロナウイルスの感染拡大防止策を講じるのを怠り、深刻な経済的損失を引き起こしたとして、中国政府や中国共産党、そのほかの役人や関係機関を提訴した。

ミズーリ州のエリック・シュミット司法長官は、中国は新型ウイルスの感染拡大を止めるために、ほとんど何もしなかったと主張している。

また、同州住民が被った経済的被害は数百億ドルに上る可能性があるとしている。

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これに対し、中国外務省の耿爽副報道局長は22日、「事実にも法的根拠にも基づかないばかげた訴訟」だと非難した。

「実にばかげている。主権平等の原則に基づき、アメリカの裁判所には中国政府に対する管轄権はない

法律の専門家たちも、この訴訟がどこまで発展するのか疑問視している。主権免除と呼ばれる法原理は、国家を外国の裁判権から免除するもので、外国政府はアメリカでの訴訟から広く守られている。

国際法が専門のシカゴ大学トム・ギンズバーグ教授は、この法原理について、「例えば大使館の車両で交通事故を起こすなど、公式な立場で活動する役人が米国内で不法行為をした場合には適用されない」と説明する。

「中国政府は嘘をついた」

シュミット州司法長官は声明で、「ミズーリ州では新型ウイルスによる影響が、非常に現実的な問題になっている。数千人が感染し、大勢死んでいる。家族は瀕死状態の愛する人たちから引き離されている。中小企業は活動を停止し、給料ぎりぎりの生活を送っている人たちは食べ物を確保するのに苦しんでいる」と述べた。

また、「中国政府は世界に対し、COVID-19(新型ウイルスによる感染症)の危険性や伝染性についてうそをつき、内部告発者を口封じし、この感染症の拡大を食い止めるための対策をほとんど講じなかった」と主張。

「中国は自分たちのとった行動の責任を負わなければならない」と続けた。

州のお金と時間を使って裁判

中国政府を提訴するには、ミズーリ州が費用を負担しなければならない。

「州司法長官室の資金は納税者が負担している。専属の弁護士がこの訴訟のために費やす時間は、他の重要な問題には使われない」と、カリフォルニア大学(UC)ヘイスティングス・ロースクールの国際法の教授、シメーヌ・カイトナー氏は述べた。

「重要な事実に基づく主張」のリストの中で、ミズーリ州の訴状は、中国政府が個人用防護具(PPE)をため込み、パンデミック(世界的大流行)を悪化させたとも非難している。一方、中国はこの危機の対処に失敗はしていないと強く主張している。

動画説明, 「ウイルスはフェイクだ!」 米国で経済再開求めるデモ相次ぐ

ニューヨークを拠点に活動するメディア・ストラテジストのストゥ・ローザー氏は、「どの州でも『AG』は『司法長官』(Attorney General)をさすが、『向上心に燃える知事』(Aspiring Governor)という意味もある、という古くからのジョークが米政界にはある」と述べた。

ギンズバーグ教授は、ミズーリ州の訴訟には「広報価値」があり、他の州も追随するだろうと見ている。「私の意見としては、州知事や司法長官は自分たちの州の住民の安全を維持するために努力すべきだ」と付け加えた。

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