中国がアメリカに報復措置、成都市のアメリカ総領事館の閉鎖命じる

The US Consulate-General in Chengdu is pictured on July 23, 2020 in Chengdu, Sichuan Province of China.

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画像説明, 中国・四川省成都市のアメリカ総領事館(7月23日撮影)。中国はアメリカに対し、27日までに閉鎖するよう命じたと報じられている

中国政府は24日、アメリカがテキサス州の中国総領事館の閉鎖を命じたことへの報復措置として、四川省成都市にあるアメリカ総領事館の閉鎖を命じたと発表した。

中国外務省はこの日、成都市の米領事館スタッフが「中国の内政に干渉し、中国の安全と利益を危険にさらした」ため、同領事館を閉鎖すると発表した。

同省の汪文斌報道官は記者会見で、アメリカは「反中国的なうその寄せ集め」に基づいてヒューストンの中国総領事館の閉鎖を決定したとも述べた。

中国はアメリカに対し、27日までに成都市の米国総領事館を閉鎖するよう命じたと、中国国営の英字紙「環球時報(グローバルタイムズ)」は伝えた。

マイク・ポンペオ米国務長官は22日、ヒューストンの中国総領事館閉鎖は、中国がアメリカの知的財産を「盗んでいる」ことを受けた決定だと説明していた。

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複数の重要な問題をめぐり、アメリカと中国の緊張が高まっている。

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画像説明, ドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席

トランプ米政権は、不公正な貿易慣行や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)への対応のほか、香港での反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」の施行、イスラム教徒のウイグル人に対する扱いをめぐり、中国と繰り返し衝突してきた。

24日には中国に対し、「報復のための報復行為を起こすのではなく、これらの悪意ある行為をやめる」よう求めた。

「ますます権威主義的に」

ポンペオ国務長官は23日、カリフォルニア州にあるリチャード・ニクソン大統領図書館での演説で、「今日、中国は国内でますます専制的になり、他のあらゆる場所の自由にますます敵対している」と述べた。

「自由主義世界は、この新たな横暴に打ち勝たなくてはならない」

ポンペオ氏の演説から数時間後、中国は米国総領事館の閉鎖を命じた。1972年のリチャード・ニクソン氏の訪中は、米中関係改善のきっかけだった。

「冷戦思考」

中国外務省の汪報道官は、ポンペオ氏の演説は、イデオロギー的偏向と冷戦思考に満ちたもの」だったと述べた。

また、「ポンペオは中国共産党に対する悪意ある攻撃的な演説を行った」とし、「これに対して、中国は強く憤り、断固として対抗する」と付け加えた。

A man enters the US Consulate General in Chengdu after China announced it was revoking the license of the US Consulate General in Chengdu on 24 July 2020

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画像説明, 成都市の米国総領事館には、現地で雇用された150人を含む200人以上が勤務している

中国外務省は先に、成都市のアメリカ総領事館の閉鎖はアメリカの行動に対する「正当かつ必要な対応」だと説明した。

「現在の中国とアメリカの状況は、中国が望んでいるものではない。その責任の全てはアメリカ側にある」

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<中国(CHINA)の首都・北京(Beijing)と米国総領事館のある四川省成都市(Chengdu)の位置関係>

成都市のアメリカ総領事館は1985年に設置され、現在は現地採用の150人を含む200人以上が勤務している。独立をめぐり、中国政府の圧力を受け続けるチベット自治区について情報収集の足がかりとして、戦略的に重要な場所と考えられている。

アメリカは、成都市の産業やサービス分野の発展から、同市が農産物や自動車、機械などの輸出の機会を提供しているとも考えている。

なぜ中国総領事館の閉鎖を命じた?

米政府は21日、「アメリカの知的財産とアメリカ人の個人情報保護のために」72時間以内(24日まで)にテキサス州ヒューストンの総領事館を閉鎖するよう中国側に命じた。

閉鎖命令に先立ち、同領事館の中庭では21日、何者かがゴミ箱内の紙を燃やす様子が録画されていた。

録画では、身元不明の何人かが紙とみられる物を複数のゴミ箱に投入していた。その後、ゴミ箱に水をかける人たちの姿も映っている。

動画説明, 米ヒューストンの中国総領事館の敷地内で、ホースを使ってゴミ箱に放水している様子が撮影された

ポンペオ氏は、中国共産党が盗んでいるのは「アメリカの知的財産だけでなく(中略)ヨーロッパの知的財産も含まれ(中略)何十万人分もの仕事を奪っている」と述べた。

「我々は中国共産党にどう振る舞ってほしいかを明確にした」、「従わなければ、アメリカの国民と安全、国家安全保障、それに経済と仕事を守る措置を取る」。

ヒューストンの中国総領事館は、中国がアメリカに置く5つの領事館の1つ。他に中国大使館がワシントンにある。

なぜ今回、ヒューストンの総領事館が閉鎖対象とされたのかは不明だ。

中国「ばかげている」

中国外務省の華春瑩報道局長はツイッターの連続投稿で、アメリカが中国総領事館の閉鎖の理由として挙げた点について、「信じられないほどばかげている」と述べた。

また、アメリカに対し「誤った決定」を覆すよう要求。そうしない場合、中国は「断固とした対抗措置を取る」とした。

ビザ不正取得で中国人を訴追

訴追された4人のうち3人はすでに逮捕され、1人はカリフォルニア州サンフランシスコの中国総領事館に逃げ込んだとされていた。米当局は24日、この1人について拘束したと発表した。

これとは別に、ワシントンの連邦裁判所では24日、中国政府の工作員として違法な活動をした罪に問われていたシンガポール人の男1人が、罪を認めたと、米司法省のジョン・デマーズ次官補(国家安全保障担当)が明かした。

ジュン・ウェイ・ヨウ(別名ディクソン・ヨウ)被告は、アメリカ国内の自身の政治コンサルティング会社を隠れみのにし、中国の諜報機関のために情報収集をしていた罪で起訴されていた。