【解説】 アマゾンの森林火災、どれくらいひどいのか
ブラジルのアマゾン熱帯雨林で、何千件もの森林火災が猛威を振るっている。その規模は、過去10年で最大とされる。
特に北部のロライマ州、アクレ州、ロンドニア州、アマゾナス州、そして南部のマットグロッソ・ド・スル州などで大きな被害が出ている。
しかし、アマゾンの森林火災のものだとして拡散されている映像や写真の中には、10年以上前のものや、ブラジル以外で撮影されたものまで含まれてしまっている。その一部は、「#prayforamazonia(アマゾニアに祈りを)」というハッシュタグで共有されている。
では、実際には何が起きているのか? そしてその被害はどれほどのものなのか。
今年は森林火災が特に多い
ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、同国ではアマゾン地域を中心に、森林火災の発生件数が2018年の同時期と比べて85%増加している。
INPEの人工衛星データによると、今年1~8月21日の間に7万5000件以上の森林火災が発生し、2013年の観測開始以降で最大を記録。昨年の同期間の3万9759件を大きく上回っている。
アマゾンではそもそも、7~10月の乾季に森林火災が起きやすい。落雷などで自然発生する場合もあるが、森林を焼いて家畜の放牧地や畑を作るため、人為的に起こされている部分もある。
環境保護活動家は、環境保護より開発を優先するジャイル・ボルソナロ政権が森林に火をつけることを奨励したことが、火事多発の原因だと非難している。
これに対し、気候変動懐疑派のボルソナロ氏は、NGO(非政府組織)がブラジル政府のイメージダウンのためにアマゾンで放火していると批判した。
一方で、ブラジルは今回の火災に対処する手段を持っていないと説明した。
ブラジル北部で大きな被害
今回の森林火災で、特に被害が大きいのはブラジルの北部だ。
今年はロライマ州やアクレ州、ロンドニア州、アマゾナス州といった地域で、過去4年(2015~2018年)と比べて森林火災の発生件数が増加している。
特にロライマ州とロンドニア州では、その数は2倍以上に達した。
森林火災発生件数は、ロライマ州で141%、アクレ州で138%、ロンドニア州で115%増加。アマゾナス州では81%増えた。南側のマットグロッソ・ド・スル州でも114%の増加がみられた。
ブラジル最大のアマゾナス州では、火災増加に伴い非常事態宣言が発令されている。
火災で大量の二酸化炭素(CO2)と煙が発生
火災による煙は、アマゾン地域から周辺地域へと広がっている。
欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービス(CAMS)によると、煙は大西洋岸まで到達している。また、アマゾンから3200キロ以上離れたブラジルの最大都市サンパウロの空を覆い、街が暗闇に包まれる被害も出ている。
CAMSはまた、今年に入ってからアマゾンの森林火災で1億1700万トン相当の二酸化炭素(CO2)が排出されていることを明らかにした。これは、2010年以降で最も多いという。
火災では有毒な一酸化炭素(CO)の排出も確認されており、CAMSの地図によると、COが南米の海岸を越えて流れていることが分かる。
世界最大の熱帯雨林を擁するアマゾン盆地は、CO2を吸収するため、地球温暖化の緩和に大事な要となっている。また、300万種もの動植物が生息し、100万人の先住民族が暮らしている。
しかし森林が焼かれたり伐採されたりすると、CO2の吸収率が悪くなるだけでなく、吸収されていたCO2が大気中に放出されるという。
ブラジル以外の国でも火災が多発
740万平方キロメートルの面積に及ぶアマゾン盆地は、ブラジル国境を越えて広がるため、周辺国でも今年は森林火災が多発している。
ブラジルに続いて多いのはヴェネズエラで、これまでに2万6000件超の火災が発生。これにボリヴィアの1万7000件超が続く。
ボリヴィア政府は、空中消火の航空機1機を借りて、東部で発生している森林火災に対処している。ボリヴィアではこれまでに6平方キロメートルの森と牧草地が焼けている。
火災発生地域には、緊急隊員が派遣されているほか、野生動物を火災から逃がすための保護区も設置された。
(執筆:マイク・ヒルズ、ルーシー・ロジャース、ナッソス・スティリアヌ)