ワクチン2回接種しても簡単に家族にうつす=新型ウイルスの英研究

ミシェル・ロバーツ、保健編集長、BBCニュースオンライン

Housemates sharing a pizza

画像提供, Getty Images

新型コロナウイルスのワクチンを2回接種した人も、感染して同居者にうつしている――。イギリスの家庭について研究した専門家らが、そう注意を呼びかけている。

医学誌ランセット感染症学で発表された研究によると、ワクチン接種を2回終えた人は、新型ウイルスの他人へのうつしやすさにおいて、未接種の人と変わらない。

無症状、あるいは症状がわずかでも、ワクチン未接種の人にウイルスをうつす確率は5回に2回(38%)ある。

この確率は、家族全員がワクチン接種を完了している場合、4回に1回(25%)に減少する。

専門家らはこの結果について、より多くの人がワクチン接種をして予防することの重要性を示すものだとしている。

また、ワクチン未接種の人が、周囲の人たちの接種をあてにして自らの感染リスクをゼロにすることはできないと警告している。

<関連記事>

予防効果は弱まる

ワクチンは、新型ウイルス感染による症状の深刻化や死亡を防ぐ上で、大きな効果がある。ただ、感染予防の効果はそれより劣る。感染力が強く、イギリスで感染の大部分を占めるデルタ変異株が出現してからは、そのことが顕著になっている。

ワクチンの予防効果は時間とともに弱まる。そのため、追加接種によって効果をアップさせる必要もある。

Chart shows fall i n protection against infection for Pfizer and AstraZeneca
画像説明,

ワクチン予防効果の変化。ファイザー製(青)、アストラゼネカ製(赤)とも、接種1カ月後(棒グラフの左側)と比べ、5カ月前後がたった後(棒グラフの右側)では効果が下がる(出典:Zoe Covid Study app)

専門家らによると、新型ウイルスの伝染のほとんどは家庭内で起こる。そのため、ワクチン接種の対象となっている全員が接種を受け、求められている回数を完了することは理にかなっている。

今回の研究は昨年9月~今年9月に実施された。ロンドンとボルトンでPCR検査を受けていた440家庭について調べ、以下がわかった。

  • ワクチンを2回接種した人は未接種の人に比べ、デルタ変異株への感染リスクが低いものの、それでもまだ相当のリスクがある
  • 2回接種者と未接種の人では、他人への伝染力では違いがみられない
  • ワクチンを接種した人は、より早く感染状態を解消できる。しかし、ピーク時(伝染力が最も強い時期)のウイルス量は未接種の人と同程度
  • いまだ家庭内で簡単に新型ウイルスがうつるのは、これが原因かもしれない

今回の研究の共同リーダー、英インペリアル・コレッジ・ロンドンのアジト・ラルヴァニ教授は、「ワクチン接種者同士の感染が確認されている現状から、未接種の人が接種を受けることの重要性があらわになっている。未接種の人が、感染とCOVID-19の重症化を防ぐために、ワクチンを受けるのは極めて重要だ。これから冬の間、多くの人が屋内で接近して過ごす機会が増えるだけに、なおさらだ」と話した。

「感染しやすさは、2回目の接種から数カ月以内にすでに高まることがわかっている。従って、(3回目以降の)ブースター接種の対象者は速やかに受けるべきだ」

共同リーダーの1人で同大学のアニカ・シンガナヤガム博士は、「私たちの研究結果から、新たな変異株に対するワクチンの効果について重要な知見が得られた。特に、ワクチン接種率の高い国々も含めた世界各地で、なぜデルタ変異株の感染者が依然として増えているのかについて、発見があった」と述べた。

「マスク着用、他人との距離の確保、検査など、伝染抑制のための公衆衛生上の措置と社会的対策を続けることは、相変わらず重要だ。これはワクチン接種を受けた人にも言えることだ」

動画説明,

「ワクチン2回受けたのに感染、私は運が悪かった?」 BBC司会者が専門家に聞く