気候変動の危機的状況は「明らか」、最新報告書、科学者1.1万人が支持表明

マット・マグラス環境担当編集委員

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地球が気候変動による危機的状況に直面しているとする調査報告が発表され、各国の科学者約1万1000人が支持を表明した。

過去40年間のデータを元にしたこの調査では、各国政府が危機への対応に失敗していると指摘。根本的で継続的な変化を起こさなければ「膨大な数の人が被害を受ける」としている。

科学者たちは、脅威の規模について世界に警告する倫理的な義務が自分たちにはあると説明している。

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この研究では、単に地表面の温度を測定するだけでは、地球温暖化の本当の危機を認めることはできないとしている。

そのため、研究チームは「過去40年以上にわたる気候変動の詳細かつ重要な兆候を示す」さまざまなデータを調査に取り入れた。

調査に使用されたデータの中には、人口や動物の生息数の増加を示すものや、1人当たりの食肉生産量、森林被覆率の低下、化石燃料消費量などが含まれている。

いくつかの領域では改善点もみられた。再生可能エネルギーは大きく伸びており、特に風力・太陽光発電由来の電気消費量は10年で373%拡大した。しかし2018年の時点ではなお、化石燃料由来の電力消費は再生可能エネルギー由来の28倍だった。

研究チームは、こうしたさまざまなデータが示す主要指標のほとんどが問題の悪化を示しており、気候変動の危機的状況を加速していると警告する。

この調査を主導したシドニー大学のトーマス・ニューソム博士は、「ここで言う危機的状況とは、私たちが炭素排出量や家畜生産、森林伐採、化石燃料消費などを削減し、気候変動に対処・対応しなければ、その影響はこれにまで経験したことがないほど深刻になる可能性が高いということだ」と説明した。

「地球の一部地域に人が住めなくなることを意味するかもしれない」

他の気候変動の調査との違いは?

今回の調査は、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書など、過去のさまざまな調査報告や警告を踏襲している。研究チームは、シンプルで明瞭な画像でさまざまなデータを提示し、脅威は深刻にもかかわらず、対応がお粗末になっていることを示そうとした。

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気候変動の影響を減らすには、森林破壊をやめることが重要だと研究チームは指摘する

他の調査と異なるのは、希望も示していることだ。研究チームは、早急に対策を施せば大きな変化を生み出せる6つの領域を紹介している。

エネルギー: 研究では各国政府に対し、化石燃料の利用を抑えるのに十分な炭素利用料を科すよう呼びかけている。また、化石燃料を取り扱う企業への補助金を取りやめ、石油やガスを再生可能エネルギーに置き換えるとともに、大規模な自然保護対策を導入すべきだと指摘した

短期間の汚染物質: メタンガスやハイドロフルオロカーボン(HFC)、すす(煤煙)などを指す。こうした汚染物質を制限することで、短期的な危機傾向を向こう数十年は50%低下させられる可能性があるという

自然: 森林破壊を止め、森や草原、マングローブ林などを回復させれば、二酸化炭素(CO2)の吸収を助けられる

食料: 研究チームは、菜食を増やし肉食を減らすという大きな食習慣の変化が必要だと指摘する。また、食品廃棄の削減も重要視されている

経済: 炭素燃料への依存から切り替え、国内総生産(GDP)の成長や富の追求ではない方向へと変わっていくべきだと指摘している

人口: 世界では毎日20万人ずつ人口が増えているが、全世界の人口を一定に保つ努力が必要

報告書を支持しているのは?

全世界153カ国の約1万1000人の科学者が、この報告書を支持した。支持者の詳細はオンラインで確認できる。

ただ、研究チームは科学者ひとりひとりにアプローチしたわけではないため、気候変動研究の大家と言える人物がいくつか含まれていないという。

ニューソム博士は、「排出量は増え、気温は上昇している。40年にわたってそれを知っているのに、私たちは何の対応もしていない。ロケット科学者でなくても、問題があることは分かるはずだ」と話した。

研究チームが求めているのは?

さまざまな気候変動会議が行われているものの、有用な措置が取られていないことに研究者らはうんざりしているという。一方、世界で広がる抗議運動には望みを抱いている。

「最近、世界中で気候を心配する声が広がっていることに勇気付けられている。政府は当たらし政策を導入し、子どもたちが学校でストライキを行い、裁判が進み、市民の草の根運動が変化を訴えている」

「科学者としては、人々に重要な兆候を広く利用してほしい。また、データを画像で示すことで、政治家や市民にこの危機の深刻さを理解してもらい、優先順位を変え、事態を進展させてほしい」

人口問題について

人口増加を抑制しようという発想には激しい異論が予想されるだけに、国連の交渉担当が扱うには危うすぎるテーマだとみられている。しかし研究チームは、この問題から目をそらすことはもはやできないと話す。

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研究チームは、気候変動の問題では人口増加にも言及すべきだとしている

ニューソム博士は、「確かにこれは議論を呼ぶトピックだが、人類が地球に与える影響について考えるなら、人口も話題に上るべきだと思う」と述べた。

「現在、出生率は世界レベルでわずかに減少傾向にある。私たちがデータ群から見つけ出した中でも、より前向きな傾向のひとつはこれだった。研究結果を発表するとき、希望といえるものを見つけるのは重要だ」