ウクライナめぐる戦争回避の合意可能と仏大統領 米高官はロシアによる侵攻警告

A woman attends military training for reservists

画像提供, EPA

画像説明, ロシアによる侵攻と戦争に備え、多くのウクライナ市民が予備役に志願している。写真は義勇兵として予備役の訓練に参加する女性

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は6日、ウクライナでの戦争を回避するための合意成立は可能だと述べた。さらに、ロシアが自国の安全保障について懸念をあらわにするのは正当な行為だと理解を示した。マクロン氏は7日にもモスクワでロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談する予定。一方で米政府高官は6日、ロシアはいつでもウクライナを侵攻できると警告した。ウクライナ外相は慎重姿勢を示した。

欧州に「新しい均衡」を=仏大統領

プーチン大統領との会談に先立ち、マクロン大統領は仏日曜紙ジュルナル・デュ・ディマンシュに対して、ロシアの目的は「ウクライナではなく、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)相手のルールの明確化だ」と述べた。

マクロン氏は、ロシアの現在の懸念に理解を示しつつ、欧州同胞の主権と平和を守ることができる「新しい均衡」の提案が必要だとした。その一方で、ウクライナの国家主権は揺るぎなく、議論の対象になるものではないともあらためて述べた。

仏大統領は自分とプーチン大統領の対話が軍事紛争の防止につながることを期待すると話した。さらに、プーチン氏はウクライナ情勢以外の幅広い話題についても、対話の用意があるはずだと述べた。

マクロン氏はさらに6日、ジョー・バイデン米大統領と電話会談した。米ホワイトハウスによると、両大統領はウクライナ情勢について抑止と外交努力の継続について話し合い、ウクライナの国家主権と領土的一体性を支持することを確認しあったという。

マクロン氏は、7日からモスクワとウクライナの首都キーウ(キエフ)を歴訪する予定。仏大統領によるこの外交活動は、ドイツやアメリカと連携の上で行われる。

Presidents Putin and Macron meeting in 2019

画像提供, TASS/Getty Images

画像説明, 2019年にプーチン大統領(左)と対面したマクロン大統領

一方でフランスでは今年4月に大統領選が控えている。

マクロン氏はかつてもロシアとの関係再構築を呼びかけ、今年1月にはアメリカに依存するのではなく、EUが独自にロシアと対話するべきだと主張していた。

<関連記事>

「ロシアはいつでもウクライナを侵攻」=米高官

他方、米政府のジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は6日、ロシアはいつウクライナを侵攻してもおかしくないとあらためて警告した。

サリヴァン補佐官は米FOXニュースに対して、「今はそういう段階だ。ロシアは一両日中にウクライナに対して軍事行動をとるかもしれないし、それは数週間後になるかもしれない」と話した。

このほかロイター通信によると、米高官2人が匿名を条件に、ロシアはウクライナに対する全面侵攻に必要な軍事力の7割をすでに配備したと話した。高官2人は、地面が凍るなどの気象条件から、2月15日から3月末にかけてロシアにとって軍の装備移動に理想的な条件が整うと話している。

ロイター通信によると高官たちは、ロシアがウクライナを侵攻すれば最大5万人の民間人が死亡する恐れがあるとみている。高官たちは、ロシア軍は攻撃開始から数日中に首都キーウを陥落できるとし、数百万人が避難する事態になれば欧州で難民危機が発生すると警告した。

ウクライナは慎重姿勢

これに対してウクライナのドミトロ・クレバ外相は6日、「終末的な予測を信じないように」とツイッターで書いた。「各国の政府はそれぞれが別々のシナリオを描いているが、ウクライナはどのような展開にも対応できる準備がある」として、今すぐ侵攻が始まるかのような言説に対して慎重な姿勢を示した。

ロシアはウクライナ国境に兵10万人以上の部隊や装備を集結させたとされているものの、ウクライナを侵攻するつもりはないとの主張を続けている。

ロシア政府はこの間、NATOの不拡大を求め、ウクライナの加盟を認めないことや東欧からのNATO軍撤収などを、欧米に要求している。

欧米諸国はこうしたロシアの要求を拒否したものの、米政府は代わりに、欧州での軍事演習やミサイル配備の制限、新戦略兵器削減条約(新START)の後継体制に関しては協議の余地があることを伝えた。

ロシアは2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合し、東部ドンバス地域で活動する親ロ勢力を支援してきた。独仏などの仲介で、ロシアとウクライナ、分離派武装勢力が2014年から2015年にかけて、ドンバスでの紛争解決に向けてミンスク合意を締結。ロシアは、ウクライナがこのミンスク合意を履行していないと主張している。ドンバスでは、ウクライナ軍と親ロ分離独立派による紛争によって、2014年以降1万4000人が死亡したと推定されている。

Graphic showing positioning of Russian troops..
画像説明, ウクライナ(UKRAINE)国境付近にロシア部隊が配置されている。赤丸は恒久的に配置されている場所で、丸の大きさは規模(1000人、4000人、6000人など)を示す。黒い印は新たに部隊が配置された場所(規模は未確認)。ベラルーシ(BELARUS)国内のロシア部隊についてはおおよその場所を示している 出典:Rochan Consulting
white space