SNS「パーラー」がアマゾンを提訴 サービス提供停止で

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画像提供, EPA

ドナルド・トランプ大統領の支持者に人気のSNSアプリ「パーラー」は11日、アマゾンに「自由な言論」を奪われたとして訴訟を起こした。アマゾンは先に、パーラーに対するホスティング・サービス「アマゾン・ウェブ・サービシズ(AWS)」を停止していた。

パーラーはトランプ氏の支持者に人気だが、トランプ氏自身は利用していない。

アマゾンは、米連邦議会議事堂にトランプ氏支持者が侵入した事件の後、パーラー上で暴力を奨励する投稿が増えているとして、サービスの停止措置に踏み切った。

これに対しパーラーは今回、独占禁止法違反でアマゾンを提訴。「パーラーのアカウントを停止するというAWSの決断は、政治的嫌悪によるものだ」、「マイクロブログ・サービス市場の競争を減退させ、ツイッターに有利になるよう計画されたものでもある」と主張した。

議事堂への襲撃事件以降、ソーシャルメディア各社がさまざまな動きを見せている。

フェイスブックとツイッターは、さらなる暴力をあおる可能性があるとして、トランプ大統領の個人アカウントを凍結した。

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グーグルとアップルはすでに、コンテンツ・モデレーション(内容確認)の要求に応えなかったとして、パーラーのアプリをそれぞれのアプリストアから削除している。

ウェブサイトでの閲覧はその後も可能だったが、アカウントがなければ内容は見られなかった。ユーザーからは、新たにアカウントを作成することができなくなっていると苦情が出ていた。

「見放された」

パーラーは2018年にサービスを開始した。他のホスティング・サービスが見つかればサービスを再開する可能性もある。

しかし、ジョン・マッツェ最高経営責任者(CEO)はフォックスニュースの取材に対し、「テキストメッセージや電子メールのサービス会社、さらには弁護士まで、あらゆる組織が我々を見放した」と述べた。

「できるだけ早くオンラインに復帰できるよう最善を尽くしているが、交渉したサービス会社には全て、アップルとグーグルが承認しなければ一緒に仕事はできないと言われ、たくさんの問題を抱えている」

パーラーのユーザーには、ジョー・バイデン次期大統領の大統領選勝利について、選挙人団投票の結果認定に反対する運動を起こしたテッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス州選出)なども含まれている。

クルーズ氏のアカウントはパーラーで500万人のフォロワーを抱えており、これは同氏のツイッターアカウントのフォロワー数よりも多いという。

クルーズ氏は週末、ツイッターに「なぜシリコンバレーの一部の大富豪が、政治的言論を独占しているのか?」と投稿していた。

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画像説明, パーラーのアプリはオフラインとなった

アマゾンはパーラーに対し、「暴力的なコンテンツが一定のペースで増えており、その全てが利用規約に反している」と警告。パーラーの管理者がこの問題に対し「効果的な手続き」で対処しているとは思えないと指摘した。

問題となっているコンテンツには、民主党員やムスリム(イスラム教徒)、「Black Lives Matter(黒人の命は大事)」運動の指導者、大手メディアのジャーナリストなどの殺害を呼びかけるものが含まれている。

一方で、パーラーのちょう落により、極右に人気の別のソーシャルメディア「Gab」の人気が高まっているという。

Gabは、「この2日間で、サービス開始からの2年間に得たよりも多くのユーザーが増えた」としている。

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<分析> ローリー・セラン=ジョーンズ、テクノロジー担当編集委員

パーラーは長年、露骨な人種差別や暴力扇動など、「触れてはならないもの」とされるもの、大手SNSからは除外されるようなコンテンツの温床となってきた。

週末にパーラーをざっと閲覧したところ、こうした内容が数多く見られた。不快な反ユダヤ主義の標榜、かぎ十字などナチスのシンボル、そして彼らがアメリカの敵と見なしている人たちへの支離滅裂な脅迫などだ。

しかし、アマゾンの措置でパーラーが使えなくなると分かると、プラットフォーム内はパニックのような状態になった。ユーザー同士が必死になって、他のプラットフォームへの移動を呼びかけていた。

ユーザーの大半がパーラーのちょう落を受け入れたものの、自分たちの戦いを他で続けると誓ったようだ。

アメリカ・ナチス党を支持しているというあるユーザーは、「これでおしまいだ」と投稿していた。

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