米FDA、ファイザー製ワクチンの緊急使用を許可
米食品医薬品局(FDA)は11日、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を許可した。
FDAはトランプ政権から、ワクチン使用を認めるよう強い圧力を受けていた。
スティーヴン・ハーンFDA長官が政府から11日に緊急使用を許可するか、辞任するよう指示されていたと米メディアは報じたが、ハーン氏は「事実ではない]と否定した。
トランプ大統領は、最初のワクチン接種を緊急使用が許可されてから「24時間以内」に実施すると述べた。
アレックス・エイザー保健福祉長官は11日、緊急使用許可に先立ち、保健福祉省はファイザーと協力して14日か15日までに大規模な予防接種計画を開始するつもりだと記者団に述べていた。
ファイザー製のワクチンはすでにイギリス、カナダ、バーレーン、サウジアラビアで当局の承認を得ている。
アメリカではこれまでに29万2000人以上が新型ウイルスで死亡している。今月9日には1日あたりの死者数が初めて3000人を超え、世界最多となった。
FDAは何と
新型ウイルスワクチンについてFDAに提言する立場の専門家委員会は10日、ファイザー製ワクチンの緊急使用を許可するよう勧めた。委員23人でなる専門家パネルは、ワクチンがもたらす利益がリスクを上回ると結論付けた。
FDAは声明で、「昨日のファーザーとビオンテックによるCOVID-19(新型ウイルスの感染症)ワクチンに関する、諮問委員会の前向きな評価を受け、米食品医薬品局は緊急使用許可の最終決定と発行にむけて迅速に取り組むとスポンサー側に通知した」と明かした。
「米疾病対策センター(CDC)と『オペレーション・ワープ・スピード』(連邦政府のワクチン計画)にも通知したので、彼らはワクチンを速やかに配布する計画を実行できる」
FDAは圧力を受けていた?
トランプ大統領は11日、FDAは「巨大で年老いた、のろまな亀」だと怒りのツイートを投稿。「ハーン長官よ、さっさとワクチンを承認しろ、今すぐに。ごまかすのはやめて人命救助を始めろ」と付け加えた。
米紙ワシントンポストは3人の情報筋の話として、マーク・メドウズ大統領首席補佐官がハーン長官に対し、11日にワクチンを承認するか辞表を提出するよう迫ったと報じた。
しかしハーン氏は米メディアに対し、ワクチン承認にむけて「迅速に作業を続けるよう促された」だけと説明。メドウズ氏の電話内容に関する報道は「事実ではない」とした。
こうした政府による圧力が報じられる中、ジョー・バイデン次期大統領は、このワクチンは信頼できると国民にはっきり示したいと述べ、「政治的な影響はない」と付け加えた。
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今後何が起きる?
政府のワクチン計画「オペレーション・ワープ・スピード」は、ワクチンの緊急使用許可が下りてから24時間以内にワクチンの供給を始めるとしている。
エイザー保健福祉長官はファイザーと連携してワクチンを出荷し、14日か15日までに最も重症化の恐れがある人へに投与できるようにすると述べた。
ファイザーは12月下旬の最初のワクチン展開で、アメリカ向けに640万回分のワクチンを用意する予定だ。1人につき2度の接種が必要なため、アメリカの総人口約3億3000万人のうち300万人分に相当する。
優先順位は不明確
CDCは、保健分野で働く2100万人と、長期入所型の介護施設で暮らす高齢者300万人が、接種で最優先されるとしている。
だが、それ以外の優先順位については明確な合意が形成されていない。社会的に不可欠な業務に就いている8700万人が次の接種対象になるとみられているが、決定権は州政府にある。
当局は、リスクが高くない国民への接種は来春、実施される見通しだとしている。
米モデルナと米国立衛生研究所(NIH)が開発したワクチンも現在、緊急使用許可が申請されている。ファイザーのワクチンと同様、2回の接種が必要となる。
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