中国の月面探査機、着陸に成功 月のサンプル採取へ

ジョナサン・エイモス、BBC科学担当編集委員

Lander

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今回の探査は高度な技術が要求される(宇宙船のイラスト)

中国の探査機が、月面着陸計画に成功した。無人探査機「嫦娥(じょうが)5号」は1日、月面の岩石や土壌を地球に持ち帰るため、月に軟着陸した。

探査機は、月の「嵐の大洋」と呼ばれる地域の近くにある火山「リュムケル山」に着陸した。今後、数日をかけて周辺を探索し、月面のサンプルを収集する。

こうした探査のため、着陸した機材にはカメラや分光計、レーダー、シャベル、ドリルなどが搭載されているという。

重さ約2キログラム分のレゴリス(堆積層)を回収した後に、軌道に残っている宇宙船まで再上昇し、地球へとサンプルを持ち帰ってくる予定だ。

月面でのこうした探査は、44年前のソヴィエト連邦の「ルナ24号」以来。当時はわずが200グラムしかサンプルを採取できなかった。

Shadow of landing leg

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月面に探査機の脚の影が落ちている画像

11月24日の探査機打ち上げは、中国国内のテレビで生中継されたが、月面着陸の瞬間は放映されなかった。

速報が流れたのは、着陸が確認された後だった。すぐに、下降する際に撮影された、月面に探査機の脚の影が落ちている画像が公開された。

アメリカ航空宇宙局(NASA)は中国に祝意を伝えた。NASAのトーマス・ツーブケン博士は、国際研究コミュニティーに今後、嫦娥5号が持ち帰ったサンプルを分析する機会が訪れることを願うと述べた。

「月でサンプルを採取し、地球に持ち帰った暁には、国際科学コミュニティーが進歩するよう、この貴重な積荷をみんなが研究できることを願っている」

Moon graphic
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赤い丸が今回、嫦娥5号が着陸した地点、黄色い丸は米アポロ計画での探査地点

Presentational white space

総重量8.2トンの嫦娥5号は24日早朝、海南省の文昌宇宙発射場から大型ロケット・長征5号で打ち上げられた。先週末には月に到着し、軌道上を回りながら、周回機・回収機と、着陸機・上昇機の2つに分かれた。

周回機と回収機は軌道に残り、着陸機と上昇機は月面着陸へと移行した。

中国当局によると、着陸機・上昇機は中国標準時の1日午後11時11分に月面に着陸。正確な着陸場所は月の西経51.8度、北緯43.1度の地点だと発表した。

中国の探査機が月面に下りるのはこれで3回目。2013年には「嫦娥3号」が、昨年には「嫦娥4号」がそれぞれ成功している。どちらの探査機も、着陸機と小さな探査車から構成されていた。

Chang'e-4

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嫦娥4号には探査車が搭載されていた

アメリカのアポロ計画、そしてソ連のルナ計画で地球に持ち帰られた月の岩石や土は、合わせてわずか400キログラム弱だ。その大半は、有人の着陸計画によって採取された。

しかし、これらのサンプルはすべて、30億年前の地層から得たものだ。一方、リュムケル山のサンプルは最古のものでも12億~13億年前だという。これにより、月の地質学的な歴史がさらに明らかになるはずだ。

また、太陽系の惑星地表面の古さを測る「クロノメーター」の正確性を向上できるという。

惑星地表面の古さはクレーターの数で決まる(クレーターが多いほどその地表面は古い)が、さまざまな場所で採取されたサンプルによる年代測定が決め手となる。アポロ計画とルナ計画のサンプルは、これに大きな役割を果たした。嫦娥5号のサンプルは、さらにデータを追加してくれるだろう。

Engineers celebrate

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嫦娥5号の制御室で、計画成功を喜ぶエンジニアたち

中国の報道では、月面でのサンプル採取には数日とかからないとされる。その後、サンプルは上昇機によって軌道上に運ばれ、回収機に格納される。

周回機は地球の近くまで戻り、内モンゴル自治区の四子王旗へ向かって大気圏に突入する。

欧州宇宙機関(ESA)で有人・ロボット探査の科学コーディネーターを務めるジェイムズ・カーペンター博士は、「嫦娥5号のミッションはとても複雑なものだ」と説明した。

「彼らの挑戦はとても感慨深いものだ。初期の嫦娥計画から最新のものまで、非常にシステマティックに、一段階ずつ探査能力を広げているのが素晴らしいと思う」