「福島原発事故でがん発症」 当時の子ども6人が東電を提訴

Masked supporters and lawyers of the six young plaintiffs hold a banner outside the Tokyo court

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画像説明, 東電を提訴した27日、東京地裁前では原告6人を支援する行進があった

2011年の福島第一原発事故の影響で甲状腺がんが発症したとして、日本の若者ら6人が27日、同原発を操業していた東京電力を相手に訴訟を起こした。

原告は事故当時6~16歳。放射線に被ばくしたことでがんになったと主張している。

弁護士によると、全員が手術を受け、甲状腺の全部または一部を摘出したという。

訴訟では、東電に計6億1600万円の損害賠償を求めている。

だが、放射線ががんを引き起こしたと証明するのは、困難を伴う可能性がある。

東電の広報は、訴えの詳細を把握し次第、対応するとした。

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福島第一原発の事故は、2011年3月11日に起きた。東日本大震災で発生した津波の影響で、原子炉のメルトダウン(炉心溶融)が生じた。

原発事故としては、1986年にウクライナ(当時はソビエト連邦の一部)のチェルノブイリ原発で起きた事故以降で最悪のものとなった。ただ、チェルノブイリと比べて放射性ヨウ素の放出量が大幅に少なかったことから、地元住民の健康被害は比較的小さかったと考えられている。

しかし、放射線の長期的な影響をめぐっては、議論が続いている。

国連の専門家委員会は昨年、事故によって直接的な健康問題は引き起こされなかったと結論づけた。世界保健機関(WHO)は2013年の報告書で、事故ががんの罹患(りかん)率を明らかにに上昇させることはないとした。

一方、日本政府は2018年に、原発の復旧などに当たっていた労働者1人が被ばくによって死亡したと発表。遺族への賠償に同意した。

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今回の訴訟の原告らは、がんの原因は恐らく被ばくだったとしている。現在17~27歳となっている原告らには、甲状腺がんになった親族はいなかったという。

井戸謙一弁護士は、原告の中には進学や就職で困難に直面したり、将来の夢をあきらめたりした人もいると、AFP通信に話した。

この訴訟は国内で大きな注目を集めている。福島の被災地から避難した多くの人は、当局の見解とは異なり、現地について慎重な見方をしている。事故から10年以上経過しても、自宅に戻っていない人が多い。