プーチン氏、米がロシアを「戦争に引き込もうとしている」 ウクライナ対応に不満
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は1日、緊張が続くウクライナ情勢について、アメリカがロシアをウクライナで戦争に引きずり込もうとしていると非難した。アメリカとNATOが書面回答を提出して以来、この危機的状況についてプーチン氏が公の場で言及するのは初めて。
プーチン大統領は、ロシアに追加制裁を加える口実として対立を利用するのがアメリカの狙いだと述べた。
また、北大西洋条約機構(NATO)の欧州における活動に対するロシア側の懸念を、アメリカが無視しているとした。
ウクライナ国境付近ではロシア部隊が増強され、緊張が高まっている。
一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は1日、ロシアがウクライナへ侵攻すれば、「ウクライナとロシアの戦争ではなく、欧州での、本格的な戦争になり得る」と警告した。ウクライナを訪れたボリス・ジョンソン英首相との会談で述べた。
プーチン氏、アメリカの狙いについて
プーチン氏は首都モスクワでハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相と会談後、「アメリカはウクライナの安全保障にはあまり関心がない様子で(中略)むしろロシアの発展阻止が主な狙いのようだ。その意味でウクライナそのものは、アメリカの目標到達のための道具に過ぎない」と述べた。
プーチン氏は、NATOがこれ以上東方拡大しないという約束を含め、法的拘束力のある安全保障を要求したのに対し、アメリカはロシア側の懸念を無視したと述べた。
そして、もしウクライナのNATO加盟が認められれば、他の加盟国がロシアとの戦争に引きずりこまれる可能性があると示唆した。
「ウクライナがNATO加盟国となり、(クリミア奪還の)軍事作戦が始まったとしよう」
「その場合、我々はNATOと戦うことになるのだろうか。この展開を考えた者はいるのか。どうやらそこまで考えが及んでいないようだ」
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ロシアは2014年にウクライナ南部クリミア半島を併合。東部ドンバス地域で流血を伴う反乱を支援してきた。西側諸国は併合から約8年が経った今、ロシアがウクライナ侵攻を計画していると非難している。ロシアはこれを否定している。
ロシア政府は、ウクライナ政府が同国東部の平和を回復するための国際的取り決めを履行していないと非難している。ロシアが支援する反政府勢力が支配するウクライナ東部での紛争では少なくとも1万4000人が死亡している。
世界最大規模の核兵器を保有するロシアとアメリカの対立関係は、冷戦時代(1947~89年)にさかのぼる。ウクライナは当時、社会主義の旧ソヴィエト連邦の重要な構成国の1つで、ロシアに次ぐ存在だった。
英首相、東欧訪問
ウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問中のジョンソン英首相は、プーチン氏が事実上「ウクライナの頭に銃を突きつけている」と非難。ロシア政府に「軍事的大惨事」から手を引くよう求めた。
ジョンソン氏はウクライナのゼレンスキー大統領と会談後、ロシアが侵攻すればウクライナ軍は反撃に出るだろうと記者団に述べた。
「ウクライナでは約20万人の男女が武装している」とジョンソン氏は述べた。「この人たちは実に激しく、実に血なまぐさい抵抗をするだろう。子どもを持つロシアの親たちは、母親たちは、この事実をよく考えるべきだ。そして、プーチン大統領が紛争の道から退き、対話に臨むことを強く望む」。
イギリスは「ロシアのつま先がウクライナの領土に侵入した瞬間に、制裁やそのほかの対抗措置を実施する」と、ジョンソン氏は警告した。
イギリスは、エネルギー分野でのロシアへの依存度を減らし、ウクライナが自立できるよう8800万ポンド(約136億円)を拠出すると発表した。
ゼレンスキー氏は、軍事対立へと事態がエスカレートする前に制裁を導入するよう求めた。
また、ロシア政府と関連のある「汚れた金」が英ロンドンの金融街シティ・オブ・ロンドンを通じて資金洗浄されていると疑われる問題について、イギリスによる対応を支持すると述べた。