米フロリダ州、中国人の不動産購入を禁止へ 住民らが違憲だとして提訴

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画像説明, アメリカのほかの地域でも、フロリダ州と同様の法案が提出され、アジア系アメリカ人から抗議の声が上がっている。画像は中国人の不動産購入を禁止するテキサス州の法案に抗議するアジア系アメリカ人

米フロリダ州で、中国など一部の国の国民が州内の家や土地を購入することを禁止する新法が7月に施行される。同州の中国人のグループは22日、違憲だとして連邦裁判所に提訴した。

原告団を代表する、アメリカの権利団体「アメリカ自由人権協会(ACLU)」は、新法を違憲かつ差別的だとしている。

原告側は、同法は中国系アメリカ人やアジア系の人々にも影響を与えるだろうと主張している。

新法の支持者たちは、アメリカの国家安全保障を守るものだと主張している。

フロリダ州知事室は、コメントの求めに対し、即座に応答しなかった。

米中関係が緊張状態にあり、同州のロン・デサンティス知事が間もなく米大統領選への出馬を表明するとされる中、今回の訴訟が起こされた。

ACLUの上級専属弁護士アシュリー・ゴルスキー氏は、「フロリダ州の差別的な財産法は、不公平で、不当で、違憲だ」と、声明で述べた。「アメリカ合衆国で暮らすすべての人は、他国の市民を含め、私たちの法律の下で平等に保護される権利がある」。

ACLUとほかの二つのグループが代表を務める原告側は、フロリダ州の法律は実際のところ、州内のこれらのコミュニティーに対する幅広い差別につながるものだと主張している。

不動産購入を禁止

7月1日に施行される新法は、「重要インフラ施設」から10マイル(約16キロ)以内にある不動産の所有が対象。ロシア、イラン、北朝鮮、キューバ、ヴェネズエラ、シリアの企業も、購入を禁止される。

「重要インフラ施設」には空港や軍事施設、宇宙船基地、製油所、発電所、水処理・廃棄物処理施設、港が含まれる。外国企業による農地の購入も禁止される。

この法律は、中国人と、中国企業への不動産販売を制限することに重点を置いている。

中国の市民や企業が不動産を購入すること、あるいは個人または企業が違法と知りながら中国の市民や企業へ販売することは、重罪とされる。禁止リストに載っているほかの国の市民については、軽罪の扱いとなる。

米共和党と民主党は長年にわたり、中国やイラン、ロシアが、電力網や投票システムといったアメリカの重要インフラに国家主導で干渉する可能性について、懸念を表明してきた。

今回のような動きはフロリダ州以外でもみられる。モンタナ州知事(共和党)は今月上旬、中国の企業や市民が農地や、特定の重要インフラに近い不動産を購入することを制限する法案に署名した。テキサス州も同様の法案について検討を進めている。

8日に中国人などの不動産購入を禁止する法案に署名した、フロリダ州のデサンティス知事は当時の会見で、同法は「中国共産党の影響力を阻止する」ための取り組みの一環だと述べた

差別的な住宅政策の歴史

アメリカには公式、非公式を問わず、差別的な住宅政策の長い歴史がある。これまで、人種や性別、思想、志向に基づく住宅差別をなくすため、複数の公民権訴訟が起こされてきた。

20世紀には、「レッドライニング」(赤線引き)と呼ばれる慣習により、多くの有色人種、とりわけ黒人は、特定の地区でしか不動産を所有できなかった。

アジア系アメリカ人も、アメリカの歴史を通じて、このような政策の重荷を背負ってきた。

「中国に対する排外主義的な政策やレトリックは、人種的偏見をあおるもの」だと、原告団を代表する団体の一つ、アジア系アメリカ人法的防御・教育支援基金(AALDEF)の法務責任者ベサニー・リー氏は述べた。

新法は、フロリダ州のアジア系コミュニティーの多くの人に、将来への不安と恐怖を与えている。

法案が成立する直前には、中国系アメリカ人がフロリダ州会議事堂で抗議した。

学生のヴィクトリア・リーさんは当時、地元紙タラハシー・デモクラットに対し、この「法案が、私のように家を持ちたいと考えている人に影響を与えることを懸念している」と語っていた。

「私たちは怖がっているし、おびえている」と、リーさんは話した。「だから私たちはここに集まった。私たちにはアメリカン・ドリームがあるので」。