トランプ氏、2兆ドル規模の経済対策法案に署名 新型ウイルス

Democratic US Representatives practise social distancing as they discuss the stimulus bill

画像提供, AFP

画像説明, 民主党の下院議員たちは社会的距離を取りながら、経済対策法案について意見を交わしていた

アメリカのドナルド・トランプ大統領は27日、過去最大の2兆ドル(約220兆円)規模の景気刺激策法案に署名し、法律が成立した。同国は新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)との格闘を続けている。

議会上院が25日に超党派の同法案に修正を加えて可決したのに続き、この日、野党・民主党が過半数を占める下院も3時間の議論を経て可決した。

ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)は、「過去100年以上で最悪のパンデミックである新型コロナウイルスのパンデミックにより、私たちの国は歴史的規模の経済、保健衛生に関する緊急事態を迎えている」と述べた。

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新たな法律の成立により、新型ウイルスのパンデミックによって死活問題に直面している個人や企業に対する、直接給付の経済支援が可能になる。

年収7万5000ドル(約820万円)未満の大人1人につき1200ドル(約13万円)、全ての子ども1人につき500ドル(約5万5000円)の給付が検討されている。

州政府への直接の経済支援や、失業保険の強化もできるようになる。通常は失業保険の対象とならないフリーランサーや、ネット経由などで単発の仕事を請け負うギグエコノミーの労働者もカバーされる。

アメリカでは26日、失業保険の申請者数が330万人に急増し、過去最大を記録した。

倒産の危機にある企業には、借り入れや税金に関して優遇措置が取られる。国民の4分の1に自宅待機が命じられるなか、各地のレストランやバー、劇場、ホテル、スポーツジムなどは閉鎖に追い込まれている。自動車メーカーや航空会社は急激に業績が悪化している。

超党派で可決

27日の下院議員の採決は当初、自宅での投票で実施される予定だった。しかし、与党・共和党の議員から定足数(全議員の過半数)を満たしているかの確認要求が出たため、議員らは急きょ議場に参集し、発声投票で採決した。

法案に反対のトーマス・マシー議員(共和党)は、発生投票ではなく正式な記録投票を求めて議事進行の遅延を狙ったが、要求は却下された。

トランプ氏はマシー議員について、「三流の目立ちたがり屋」とツイッターで怒りを表明。共和党からの追放を求めた。

ホワイトハウスで開かれた署名式には、民主党の議員は招かれなかった。ただトランプ氏は、同党と共和党について、「違いを脇に置き、国を最優先して一致した」ことに感謝すると述べた。

また、今回の経済対策は過去のいかなる対策と比べても「2倍は」あると説明。「これにより、この国の家族、労働者、ビジネスが緊急に必要としている支援が届けられる」と述べた。

GMに人工呼吸器製造を命令

トランプ氏は署名して法律にする直前、民間企業に国防に必要な物資の生産を命令できる「国防生産法」(DPA)を発動。

米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)に対し、需要が急増している人工呼吸器を製造し連邦政府に納めるよう命じると述べた。

この前には、トランプ氏はツイッターで、GMが「非常に必要とされている人工呼吸器を4万台『とても素早く』我々に供給する」と約束したと明らかにした。

また、「GMは4月下旬で6000台にしかならないと言う一方で、最高額を要求している」と述べ、DPAの発動をちらつかせて圧力をかけていた。

署名式でトランプ氏は、「莫大な量の(医療)補給」が近々あるとし、「話していることすべてが素晴らしい結果となっている」と付け加えた。

患者の増加に医療が追いつかない

アメリカの新型ウイルスの感染者は10万人を超え、世界最多となっている。死者数は約1500人で、イタリアや中国を下回っている。しかし、ニューヨークやニューオーリンズ、デトロイトの各市では、感染拡大が急激に起こるホットスポットが確認されている。

ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は27日、仮設病院8カ所で、予想されていた新型ウイルス感染者の急増があったと発表した。

また、同州の新型ウイルスによる死者は国内最多の519人に上り、感染者は4万4635人になったと説明。いかなる「現実的なシナリオ」を考えても、同州の医療制度は重症患者の増加に追いつかないだろうと述べた。

さらに、同州では人工呼吸器が「天文学的な数ほど」不足していると付け加えた。

南部ルイジアナ州も危機的

人工呼吸器の需要は、南部ルイジアナ州でも倍増している。同州のジョン・ベル・エドワーズ知事は、ニューオーリンズ市で患者の増加が続いた場合、4月2日までに人工呼吸器の備えが底をつき、4月7日までには病床が足りなくなるとの見通しを表明。「根拠のない理論ではない。実際に起こることだ」と述べた。

アメリカ各地の医療関係者は、感染から身を守る防具の不足を訴えている。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は27日、防具の「慢性的な世界中の不足」が、人命救助にとっての「最も差し迫った脅威」になっていると述べた。

マイク・ペンス米副大統領は26日、アメリカの全50州で新型ウイルスの検査が可能になったと述べた。同日までに計55万2000件以上の検査が実施されたという。

トランプ氏は、イースター(復活祭)の日曜日となる4月12日を、アメリカが経済活動を再開する目標日に定めている。この目標に対しては強い批判の声が出ている。

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