ウクライナ軍、ロシア占領の南部ヘルソンで主要な橋をまた破壊と 移動に不可欠

An armoured truck of pro-Russian troops is parked near Ukraine's former regional council's building in Kherson

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画像説明, 南部へルソンの元地方行政庁舎前に駐車する親ロシア勢力の装甲車

ウクライナ軍は13日、ロシア軍が占領する南部ヘルソン州で移動に欠かせない主要な橋をまたひとつ破壊したと発表した。ウクライナは、ロシアが侵略開始から間もなく占領したヘルソン州を奪還しようと、激しい戦闘を展開している。

ウクライナ軍によると、ノヴァ・カホフカのダムにかかる橋はもはや通行不能だという。この主張の客観的な検証はされていない。南部軍管区はフェイスブックに、「ノヴァ・カホフカのダムにかかる道路橋の破壊が確認され、使用できなくなった」と書いた。

ウクライナ軍は7月末にも、ヘルソン州を流れるドニプロ川の渡河に重要なアントニフスキー橋を通行不能にした。西側消息筋は、アメリカ製の高機動ロケット砲システム「ハイマース」によって、この橋は「使用不能になった」としている。

イギリス国防省は13日、連日定例の戦況分析で、ウクライナ軍による8月10日の精密攻撃で、重い軍用車両はノヴァ・カホフカの道路橋でドニプロ川を渡ることができなくなったと指摘した。ノヴァ・カホフカは、ヘルソン市から約55キロ北東にある。

イギリス国防省はさらに、アントニフスキー橋についてロシアは場当たり的な修復しかできておらず、橋は構造的に破損したままだと説明。先週にはヘルソン近くの主要な鉄道橋もさらに破壊された。このため、ロシア軍は7月末から、鉄道橋の近くで浮橋を設置して補給を運んでおり、ドニプロ川の西側にいる数千のロシア兵は、「わずか2カ所の浮橋を使った渡河ポイント」に「ほぼ完全に依存している」という。

「たとえロシアが各地の橋をかなり修復したとしても、重要な脆弱(ぜいじゃく)カ所であり続ける」と、イギリス国防省は指摘している。

Antonivsky Bridge

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画像説明, アントニフスキー橋

また複数の軍事アナリストは、ドニプロ川の西にいるロシア軍部隊は、他の占領軍から切り離され孤立する恐れがあると指摘している。

ウクライナ軍は橋の破壊によって、各地のロシア軍部隊を孤立させ、究極的にはヘルソン州を奪還したい考え。開戦前には人口約29万人だった同州は現在、ロシアが後押しする行政官が統治している。

2月末の侵攻開始以降、ロシア軍が新たに制圧した州都はヘルソン市のみ。それだけに、その奪還はウクライナにとって大きな成果となる。

ロシア編入の住民投票へ

Russian passport office in Kherson

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画像説明, ロシアの大統領令によって、ヘルソンの住民はロシアのパスポートを取得しやすくなった。写真は、ヘルソンでロシアの旅券を申請する人たち

ロシアは先月、ウクライナでの軍事目標は東部のみに限らず、南部のヘルソン州とザポリッジャ州の制圧も視野に入れていると方針の拡大を明らかにしていた。

ロシアの国営タス通信によると、ロシアが後押しするヘルソン市の行政当局は、正式なロシア編入に向けた住民投票の実施計画を進めている。

アメリカは、こうした住民投票を通じて、ロシアが占領したウクライナの各地域を違法に併合しようとしていると批判している。

ウクライナ政府で、一時的に占領された地域の再統合を担当するイリナ・ヴェレシュチュク再統合相は、被占領地域で行われるこうした住民投票は、決して国際社会で承認されないと批判した。さらにヴェレシュチュク氏はあらためて、被占領地域にとどまるウクライナ人に避難を呼びかけた。