ロシア軍がマリウポリで化学兵器使用か、未確認と各国当局

Mariupol has been virtually wiped out by weeks of heavy Russian bombardment

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画像説明, ウクライナ南東部マリウポリは、ロシア軍による激しい砲撃で事実上壊滅状態にある

ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリで、ロシア軍が化学物質を使用した疑いが11日、浮上した。各国当局は確認中だとしている。他方、マリウポリ市長は、これまでに民間人1万人以上が死亡したと明らかにした。こうした中、オーストリアのカール・ネハンマー首相が欧州連合(EU)加盟国首脳として侵攻開始後初めて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と直接会談したものの、楽観的な成果はなかったと話した。

化学物質使用の可能性の報告=英外相

イギリスのリズ・トラス外相は11日、ロシア軍がマリウポリ市民への攻撃に化学物質を使用した可能性があるとの報告」があったとツイートした。

「我々は詳細を検証するため、パートナーの国々と共に緊急に取り組んでいる。このような兵器の使用は、この紛争における無慈悲なエスカレーションであり、我々はプーチン大統領とその政権の責任を追及していく」

これに先立ち、ウクライナのアゾフ大隊の戦闘員も同日、ロシア部隊が包囲したマリウポリで「ウクライナ軍と民間人に対して正体不明の毒物を使用した」と述べていた。

こうした主張を裏付ける証拠は示されていない。

マリウポリ市長の補佐官、ペトロ・アンドリュシチェンコ氏は自身のテレグラム・チャンネルで、化学攻撃に関する報告は確認されていないとし、追って説明するつもりだと述べた。

米国防総省は、ロシア軍が化学兵器を使用した可能性があるとする「ソーシャルメディア上の報告」を把握しているとしつつ、事実かどうかは未確認だとした。

同省のジョン・カービー報道官は、「現時点では確認できない。引き続き状況を注視していく」と述べた。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11日夜のビデオ演説で、この問題に言及。「侵略者(ロシア)の代弁者の1人が、マリウポリの防衛者に対して化学兵器を使用する可能性があると述べた。我々はこれを極めて深刻に受け止めている」と話した。これ以上の詳細は明かさなかった。

ロシアはこれまでのところ、この問題について公式にコメントしていない。

西側諸国やウクライナの当局者は、侵攻開始当初からロシア政府がウクライナでの化学兵器の使用を計画していると非難してきたが、そのような攻撃はいまのところ立証されていない。

12AprilMariupol

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プーチン氏と直接会談のオーストリア首相、成果には「悲観的」

オーストリアのカール・ネハンマー首相は11日、ロシア・モスクワを訪問した。侵攻開始以来、欧州連合(EU)加盟国首脳とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が直接会談するのは初めて。

ネハンマー首相は会談後、プーチン大統領に事実を突きつけるためにモスクワ入りしたものの、会談では「前向きな印象」は得られなかったと話した。

「楽観的か悲観的かと問われれば、どちらかというと悲観的だ」とし、ロシア側はプーチン氏とゼレンスキー氏の直接会談実施に「ほとんど関心がなかった」と付け加えた。

一方、ゼレンスキー氏は10日放送の米CBS「60ミニッツ」で、ウクライナの一部地域をロシアに譲り渡す気はあるかどうか問われると、「その用意はできていない」としながらも、いずれ交渉が行われればロシアのそうした要求が取り上げられるはずだと認めていた。

Image shows Austrian Chancellor Karl Nehammer getting into car

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画像説明, オーストリアのカール・ネハンマー首相は11日にロシアを訪問した

マリウポリ、民間人1万人超が死亡

ロシア軍に包囲されたマリウポリのヴァディム・ボイチェンコ市長はAP通信に対し、同市では開戦以降少なくとも1万人の民間人が死亡したと述べた。

ボイチェンコ市長は11日、遺体がマリウポリ市内の「路上にじゅうたんのように敷き詰められている」と、市外の非公開の場所から語った。

また、市内には依然として12万人の民間人が残っているとし、食料や水、医薬品が緊急に必要だと付け加えた。

ボイチェンコ氏は、ロシア軍が遺体を回収し、大型ショッピングセンターの冷蔵庫に保管しているとの報告を受けたと明らかにした。ロシア軍が集めた遺体を焼却するため、「トラック型の移動式火葬場が現地に到着している」という。

市長はこれについて、複数の情報源に基づく内容だとAP通信に話した。BBCはこれが事実かどうか検証できていない。

Image shows burnt out building

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画像説明, 焼け落ちた建物と親ロシア派の兵士(10日、マリウポリ)

ハルキウに地雷が投下

北東部ハルキウの当局は、上空から地雷が投下されているとして、地雷に近づかないよう住民に警戒を呼びかけている。

ウクライナでの地雷除去活動を率いるニコライ・オフチャルク中佐によると、地雷には「自爆タイマー」が仕掛けられており、地上に落下してから数時間後に作動するという。

複数の住民はロイター通信に対し、地雷の一部は11日早くに投下されたと証言した。セルゲイと名乗る男性は、「午前1時に奇妙な音が聞こえた。誰かが笛で合図すると地雷が投下された」と話した。

ゼレンスキー大統領はビデオ演説で、「占領軍がいたるところに地雷を残していった。占領した家の中にも。路上にも、畑にも。市民の所有物、車やドアにも地雷を仕掛けた」と話した。