岸田文雄・自民党総裁、第100代首相に選出

Fumio Kishida

画像提供, Reuters

画像説明, 国会で第100代首相に選ばれた岸田文雄氏

日本の衆参両議院は4日午後、本会議で首相指名選挙を行い、自由民主党の岸田文雄総裁(64)を第100代の首相に指名した。国内メディアは、岸田氏が総選挙を今月19日公示、31日投票の日程で行う意向を固めたと報じている。

この日午前、菅義偉内閣が総辞職した。それを受けて臨時国会が召集され、首相指名選挙が実施された。

岸田氏は先月29日の自民党総裁選で、新総裁に選ばれていた

衆院の首相指名選挙では、投票総数458票のうち、岸田氏が過半数の311票を獲得。立憲民主党の枝野幸男代表は124票、日本維新の会の片山虎之助共同代表と、国民民主党の玉木雄一郎代表が各11票、自民党の高市早苗政調会長が1票を得た。

参院でも岸田氏は、投票総数241票の過半数となる141票を取った。枝野氏は65票、片山氏と玉木氏はともに15票だった。このほか、嘉田由紀子氏(無所属)と渡辺喜美氏(同)は各2票、国民民主党の伊藤孝恵副代表が1票を得た。

直ちに組閣

岸田氏は直ちに組閣に着手し、同日午後3時45分からは閣僚名簿が発表された。

松野博一・党総務会長代行が官房長官に選ばれ、新政権の閣僚名簿を読み上げた。松野氏は拉致問題を兼務することになった。

茂木敏充外相や岸信夫防衛相は再任された。文部科学相だった萩生田光一氏は、経済産業相に担当が変わった。

岸田氏と党総裁選を争った野田聖子・党幹事長代行は少子化・地方創生相に、堀内詔子・環境副大臣がワクチン・五輪相に、それぞれ充てられた。牧島かれん党青年局長がデジタル相に就くことになり、女性閣僚は3人になった。

古川禎久法相、小林鷹之・経済安全保障担当相、山際大志郎・経済再生相など、閣僚20人のうち13人が初入閣。

総選挙は31日投開票か

現在の衆院議員の任期は今月21日に満了する。そのため総選挙の日程に関心が集まっている。

NHKなどによると、岸田氏は臨時国会最終日の今月14日に衆議院を解散し、19日公示、31日投票の日程で総選挙を行う意向を固めたという。新政権発足の勢いを追い風に直ちに選挙をした方が、有利だと判断したとみられる。

岸田氏は8日に所信表明演説をし、11~13日に代表質問に臨む予定。野党はその後に予算委員会を開くよう求めているが、与党側は応じない方針だとされる。

問題が山積

岸田氏は、新型コロナウイルス流行の影響を受けた経済の立て直しや、北朝鮮の脅威への対応など、さまざまな困難に首相として直面することになる。

自民党に対する支持は、東京オリンピック・パラリンピックが世論の反対を押し切り、新型ウイルス感染拡大の懸念がある中で開催されたことなどで低下した。岸田氏はそれを回復させたい考えだ。

岸田氏は何年も前から、首相の座への意欲を示してきた。昨年8月には、長期政権を率いた安倍晋三氏の首相退任を受け、党総裁選に初挑戦。しかし、安倍政権で官房長官を務めた菅氏に敗れた。

先月の党総裁選で勝利した後には、「岸田文雄の特技は人の話をしっかり聞くということだ。ぜひみなさんと一緒に、開かれた自民党、明るい日本を目指して努力をする覚悟だ」と述べていた。

改革と配慮のバランス

岸田氏は党総裁選への立候補にあたり、党指導部を刷新し、党役員の任期を短くすると表明して、ベテラン議員らの反感を買った。

しかしそのことが、新総裁の有力候補とみられることにつながった。総裁選では当初、有権者の間で知名度が高い、改革派の河野太郎・ワクチン担当相が有利とされていたが、それをひっくり返して勝利した。

岸田氏が支持をつなぎとめるには、党改革を進めながら、党内の保守派の要望にも応えることが必要になるだろう。

それに失敗すれば、菅氏と同様、短命政権のリーダーに終わる危険がある。安倍政権前の2006~2012年にかけて、日本は首相が6人も次々と交代する「回転ドア」状態だったが、再びそうなる可能性もある。

岸田氏はどんな人か

岸田氏は広島1区選出の衆院議員で、当選9回。祖父と父も衆院議員だった。小学校時代は3年間、通産官僚だった父の転勤に伴い、米ニューヨークの学校に通った。

沖縄北方担当相や外相、防衛相を歴任。党では国会対策委員長や政務調査会長などを務めた。外相は2012年から5年間務め、最長記録となった。

選挙区が広島ということもあり、核兵器には反対している。2016年に現役の米大統領としてバラク・オバマ米大統領(当時)が初めて広島を訪問した際には、その調整役を果たすとともに、現地で案内した。

菅氏が談話発表

首相を退いた菅氏は先月はじめ、就任からわずか約1年で退陣を表明した。直前まで続投に意欲を示していたが、新型ウイルス対応への批判などから支持率が大きく下がり、党内での求心力も失われたことから、党総裁選への立候補を断念したとされる。

菅氏は総辞職にあたって談話を発表。「『国民のために働く内閣』として、様々な改革を進め、多くの課題に対処してきた」とした。

ワクチン接種に特に力を入れてきたとし、「このまま進めば、我が国は、世界でもワクチン接種が最も進んだ国の一つになる」と成果を強調した。

東京オリンピック・パラリンピックについては、「開催国としての責任を果たし、やり遂げることができた。選手の方々の素晴らしい活躍は、多くの人々に感動をもたらし、世界中に夢や希望を与えてくれた」とした。

そして、「次なる内閣、新総理に対しても、皆様の御支援をお願いいたします」と締めくくった。