中国政府、香港に治安維持機関を新設 国安法で

A bomb disposal van at the opening ceremony in Hong Kong

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画像説明, 「国家安全維持公署」の開所式典には、警察の爆弾処理班などが配備された

香港への統制を強化する「香港国家安全維持法」の施行を受け、中国政府は8日、香港に治安機関「国家安全維持公署」を開設した。中国大陸から派遣される公安捜査員がここを拠点に、初めて香港域内で活動することになった。

「香港国家安全維持法」(国安法)によって、中国政府への批判は犯罪行為と位置づけられることになった。国家安全維持公署は新法の執行機関。

「一国二制度」が約束されていた香港はこれまで、中国国内で唯一、政府批判が違法ではない地域だった。

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新法の成立は深刻な人権侵害につながると、香港の内外で懸念されている。一方で、昨年から相次ぐ暴力的な抗議行動がこれで下火になり、香港に安定が復活すると期待を示す人もいる。

香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は7日、国安法について、「国の治安と安全を守るための法律としては比較的緩やかなものだ」と述べた。また、新法によってむしろ香港市民は「威圧されたり攻撃されることなく、自分の権利や自由を行使できるようになる」と評価した。

Journalists take photos of the new security office

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画像説明, 国家安全維持公署の事務所の外に中国国旗が掲げられた

国家安全維持公署の事務所は、銅鑼湾地区のホテルの中に設置された。近くには、民主化デモや行進の中心地だったヴィクトリア公園がある。

8日午前には開所式が開かれ、林鄭長官のほか、対デモ強硬派として知られ国家安全維持公署の初代署長に選ばれた鄭雁雄氏らが出席した。

警察の爆弾処理班が待機する厳戒態勢のなか、事務所の前には中国国旗が掲げられた。

「治安を守る門番」

中国政府の香港出先機関、中国政府在香港連絡弁公室の駱恵寧主任は、新設の事務所が「香港の安全を代表し、国の治安を守る門番」になると述べた。

中国大陸から派遣される公安職員は新事務所を拠点に、初めて香港域内で幅広い捜査権を持つ。場合によっては香港住民を大陸に送致し、裁判にかけることもできる。

中国共産党が取り仕切る中国の裁判所では、有罪判決が出る確率はほぼ100%。

国安法の施行を受けて、すでに複数の民主活動家が香港を脱出したり、ソーシャルメディアのアカウントを閉じたりしている。

民主活動家たちの著作が公共図書館から撤去されるようになり、複数のソーシャルメディア企業は香港警察の情報開示請求に対する協力を「停止」する方針を示している。中国バイトダンス(字節跳動)が運営する短編動画投稿アプリ「ティックトック」は、近く香港市場から完全撤退すると発表した。