TikTok、ロンドンの国際本社設置に暗雲 英中の緊張やアメリカの圧力で

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中国系の動画共有アプリTikTokがロンドンに国際本社を置く計画に暗雲がたちこめている。イギリスと中国の間で緊張が高まっているほか、同アプリを運営するByteDanceと中国政府との関係をアメリカが問題視しており、プレッシャーをかけているからだ。

ByteDanceはイギリス政府と協議を進めていると説明。「引き続きロンドンへの投資を進めていく」と話した。

これに対しイギリスの国際貿易省の報道官は、「ByteDanceの国際本社の場所は、同社の商業的な決定だ」としている。

こうした中でアメリカ政府は、国内でのTikTok禁止を視野に入れている。中国との関係を断ち切ってアメリカ企業にならない限りは運営を禁止する可能性もある。

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イギリスは先に、来年以降は中国・華為技術(ファーウェイ)の第5世代移動通信システム(5G)向け設備の購入を禁止すると通信各社に通達。すでに購入していた場合も、2027年までに通信網から撤去する必要があるとしている。

これにより、英中間で経済戦争が起きるとの懸念も出ている。

中国の劉暁明駐英大使はBBCのアンドリュー・マー・ショーに出演し、「我々はなお影響を精査している。非常に悪い決断だ」と述べた。

中国で活動するイギリス企業に制裁を加えるかとの質問には、「経済を政治化したくない。それは間違いだ」と答えた。

その上で、「イギリスがアメリカからの圧力を受けて中国企業を差別するのは間違っている」と述べた。

「射程圏内」

アメリカはすでに、ファーウェイに対して数々の制裁を科している。

ドナルド・トランプ政権は、ファーウェイはその製品を通じて中国のスパイに抜け道を提供しており、国家安全保障の脅威になると主張。ファーウェイはこの疑惑を強く否定している。

英オックスフォード大学中国センターのジョージ・マグナス助教は、中国がファーウェイの件でイギリスに報復するかどうかは「予測が難しい」と話した。

「しかしイギリス企業は報復の射程圏内に入っているだろう」

イギリス企業にとって中国は重要な市場だ。

インドのタタ・モーターズが所有する英高級車ジャガー・ランドローバーは中国で事業を展開している。しかし新型コロナウイルスの影響で販売が落ち込み、6月には中国の5銀行から計5億6000万ポンド(約750億円)を借り入れた。

一方で中国はイギリスで、特に原子力発電関連で大きな投資をしている。中国広核集団(CGN)はヒンクリー・ポイント原発の建設など、これまでに36億ポンドを投じている。

イギリス産業連盟(CBI)のジョシュ・ハーディー副会長は、「新型ウイルスが収束した後、イギリス経済の回復のためには貿易促進が重要になってくるだろう。さまざまな利益を考慮しながら、イギリスの世界的な競争力と(中国との)関係性を慎重に考える必要がある」と述べた。

動画説明,

アメリカやイギリスはTikTokを禁止する? 問題点は?

TikTokは現在、欧州で1000人を雇用。その大半がイギリスとアイルランドだ。

英日曜紙サンデー・タイムズによると、同社がイギリスに国際本社を置いた場合、3000人の雇用が生まれるという。

TikTokはこれまでに20億回ダウンロードされ、ユーザーは8億人に上っている。

アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は当初、アメリカでTikTokを禁止すると言っていた。

しかし先週、トランプ大統領の主任経済顧問を務めるラリー・クドロウ氏は方針転換を示唆。「複数の報道にあるように、TikTokは中国が運営するホールディング・カンパニーを抜け、独立したアメリカ企業になると思う」と話した。

「禁止したり、規制したりするよりもはるかに良い解決策だ」

ポンペオ長官は、アメリカのTikTokユーザーのデータが「中国共産党の手に」渡る危険性があると主張している。

TikTokの広報担当者は、「中国政府にデータを提供したことはない。要請されても、提供しないだろう」と話している。

インド政府は、TikTokを含む複数の中国系アプリを禁止している。オーストラリアはすでにファーウェイや通信機器・中興通訊(ZTE)を禁止しているが、TikTokの禁止も視野に入れている。