トラス英外相、ロシアを「ウクライナ全土から押し出すべき」

ジェイムズ・ランデール外交担当編集委員

Liz Truss at Mansion House in London

画像提供, Reuters

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リズ・トラス英外相

イギリスのリズ・トラス外相は27日、ロシア軍を「ウクライナ全土から」押し出さなければならないと発言した。

ロンドン市長の官邸「マンション・ハウス」での基調講演でトラス外相は、ウクライナの勝利は西側諸国にとって「戦略的急務」となっていると語った。

イギリスはこれまで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領のウクライナ侵攻を「失敗させ、そう見せる必要がある」と述べるにとどまっていた。この日のトラス氏の発言は、ウクライナでの戦争をめぐるイギリスの目標を、これまでで最も明確に示したものといえる。

トラス外相は、西側の同盟諸国はウクライナへの支援を「倍増」しなくてはならないと強調。「ロシアをウクライナ全土から押し出すために、これまで以上に、より早く行動し続ける」と述べた。

これは、ロシア軍について、2月24日の侵攻開始以降に占領した地域だけでなく、南部クリミアや東部ドンバス地域の一部など8年前に併合した地域からも撤退すべきとの考えを示唆したものとみられる。

侵攻開始から1カ月の節目に、ロシアはその目的を「ドンバスの解放」と位置付けた。ここでいうドンバスとは主に、ウクライナのルハンスクとドネツクの両州を指している。

これらの地域の3分の1以上はすでに、2014年に始まった紛争で親ロシア派の武装組織が制圧している。

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トラス氏の野心的な目標は、全ての西側諸国と共有されているわけではない。武力によってであれ交渉によってであれ、達成は難しいとの懸念があるためだ。

フランスやドイツの政府関係者からは、戦争の目的を明確にすればロシアを挑発するリスクがあるという慎重な声も出ている。それらの関係者は、ウクライナ防衛という表現に絡めて話をすることを好んでいる。

トラス外相の発言は、目標を高く設定することで、ウクライナが今後、交渉の場に立った際に、政治的和解についてより有利に立てるようにしたいという西側諸国の思いを反映している。

トラス外相はまた、西側諸国は「経済的影響力」を使って、ロシアを西側の市場から排除すべきだと述べた。

「グローバル経済へのアクセスは、ルールにのっとっているかで決められるべきだ」とトラス氏は指摘した。

最大野党・労働党のデイヴィッド・ラミー影の外相は27日、トラス氏の演説は、保守党政府の10年超にわたる防衛・安全保障政策の「失敗を認めたように思える」と指摘した。

対ロシア防衛の拡大を強調

トラス氏は演説の中で、西側諸国はロシアのさらなる侵攻を防ぐための対策を講じるべきだと訴えた。

これには防衛費の増額も含まれるとし、北大西洋条約機構(NATO)が各国の拠出目標として設定している国内総生産(GDP)2%という数値は「上限ではなく下限と見るべきだ」と述べた。

さらに、ロシアから脅威を受けている国々に対する武器供与にも積極的な姿勢を示した。

「ウクライナだけでなく、西バルカン諸国やモルドヴァ、ジョージアといった国々が、主権と自由を維持する耐久力と能力を持てるようにするべきだ」

また、スウェーデンやフィンランドがNATO加盟を選んだ場合には「迅速に統合させることが必要だ」と述べた。

「ウクライナの戦争は我々の戦争、全員の戦争だ。ウクライナの勝利は、我々全員の戦略的急務になっているからだ」

「重火器、戦車、戦闘機……倉庫の奥まで探し回って、生産能力を高める必要がある。そのすべてをする必要がある」

「私たちは慢心できない。ウクライナの運命はまだ拮抗(きっこう)している。はっきりさせておきたいのは、もしプーチン大統領が成功すれば欧州全体に甚大な悲劇が起こり、世界中に恐ろしい影響が出るということだ」

議会での演説でプーチン氏は、「我々にはあらゆる手段がある。(中略)我々はそれを鼻にかけるのではなく、必要に応じて使用する」と述べた。

プーチン氏の言う「手段」は、弾道ミサイルや核兵器を指しているとみられる。