イギリス、新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」を承認 世界初

ジム・リード保健担当記者

Molnupiravir pills

画像提供, Merck

画像説明, 新型コロナウイルスの感染症COVID-19の経口治療薬「モルヌピラビル」は、重症化や死亡リスクを半減する

イギリスの医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は4日、新型コロナウイルスの感染症COVID-19の経口治療薬「モルヌピラビル」を承認した。

モルヌピラビルは、新型ウイルスへの感染が分かってすぐの、重症化リスクの高い患者を対象に、1日に2回投与される。

同薬は当初、インフルエンザ治療薬として開発されたが、臨床試験の結果、COVID-19による入院や死亡リスクを半減することが分かった。

イギリスのサジド・ジャヴィド保健相は、もっとも弱い人や免疫不全状態にある人たちにとって、この薬は「画期的なもの」になると語った。

声明の中でジャヴィド保健相は、「きょうはイギリスにとって歴史的な日になる。我が国は世界で初めて、自宅で飲めるCOVID-19向け抗ウイルス薬を承認した」と述べた。

イギリスでは4日、新たに4万1242人の感染が確認されている。陽性判明から28日以内の死者は214人だった。

初の経口治療薬

米医薬品大手のメルクとリッジバック・バイオセラピューティクスが開発したモルヌピラビルは、COVID-19向けとしては初の経口抗ウイルス薬。

イギリスは治療48万回分のモルヌピラビルを購入することで合意しており、今月中に最初の入荷が予定されている。

まずは全国的な研究の一環として、ワクチン接種を終えている患者と未接種の患者の両方に投与する。そこで得られた有効性のデータをもとに、追加発注の是非を決めるという。

イギリス政府は、最初の48万回分の購入額を明らかにしていない。しかしアメリカは事前購入契約で、170万回分を12億ドルで確保しており、患者1人当たりだと700ドル(約8万円)になる計算だ。

このほか、オーストラリアとシンガポール、韓国もすでに購入契約を結んでいる。

COVID-19の経口治療薬については、米ファイザーも2種類の候補の臨床試験を開始している。また、スイスのロシュも同様の治療薬開発に動いている。

Lab Technician looking through microscope during clinical research testing.

画像提供, MSD

画像説明, モルヌピラビルは米医薬品大手のメルクとリッジバック・バイオセラピューティクスが開発した

MHRAは今回、モルヌピラビルの投与対象を、軽~中等程度の症状があり、肥満や糖尿病、心疾患といった重症化リスクを1つでも抱えている患者と定めた。

また、検査で陽性が判明したら「できるだけ早く」、発症から5日以内に投与することが望ましいとしている。

一方で、国民保健サービス(NHS)でどのように迅速に流通するかは定かではない。介護施設などに供給されるほか、その他の高齢者や重症化リスクの高い人は、検査で陽性が判明してからかかりつけ医によって処方される形になるとみられている。

臨床試験の結果

モルヌピラビルは、新型ウイルスが複製される時に使われる酵素に着目。この酵素の遺伝子にエラーを引き起こす。これによって体内でウイルスが複製されず、ウイルス値を低く抑えられるため、重症化を防げるという。

メルクは、この仕様であれば、既存のウイルスだけでなく将来的に発生する変異株にも同じような効果が得られるはずだと説明している。

モルヌピラビルの早期臨床試験には、最近新型ウイルスに感染した775人が参加した。

  • モルヌピラビルを投与された人の7.3%が入院した
  • プラセボ(偽薬)を投与された人の入院率は14.1%だった
  • モルヌピラビルを投与された患者からは死者は出なかった。プラセボを投与されたグループでは8人が亡くなった

この結果は公式に発表されているものの、まだ査読を受けていない。

一方で臨床試験のデータからは、発症直後に飲まないと効果が出ないことが分かった。すでに入院している重症患者を対象とした臨床試験は、結果が思わしくなかったため中断された。