週2回の無償ウイルス検査、英イングランドの全市民に提供へ

A woman taking a Covid test

画像提供, Getty Images

イギリス政府は新型コロナウイルス検査計画の拡大の一環として、9日からイングランドの全ての市民が、週2回のウイルス検査を無償で受けられるようにする。

イングランドの全市民へのウイルス検査には、約30分で結果が出る「ラテラルフロー」と呼ばれる方式の迅速検査が用いられる。この検査キットは検査会場や薬局、郵送で無償で入手できるようにする。

迅速検査は新型ウイルス感染症COVID-19の症状がない人を対象としたもので、自宅でも実施することが出来る。

イングランドでは今年になって、3月までの学校再開を目指し、この検査をすでに学校に通う子どもたちとその家族、仕事のため外出する必要のある人を対象に提供してきた。

ボリス・ジョンソン英首相は9日からイングランドの全市民にウイルス検査を提供する計画を歓迎。「ワクチン接種計画が順調に進み、制限を慎重に緩和するロードマップが進められる中、これらの努力が無駄にならないようにするためにも、定期的な迅速検査がさらに重要になる」と述べた。

マット・ハンコック保健相は、この検査計画は今後の感染流行を抑えるのに役立つと説明した。

しかし、この計画に批判的な人たちからは「とんでもない」お金の無駄遣いになる危険性があるとの声が上がっている。

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ジョンソン首相は5日も閣議を開き、ロックダウン措置緩和計画の第2段階の開始を承認する予定。第2段階では12日から、必要不可欠ではない小売店が再開される。また、バーやレストランは屋外でのサービスの提供が可能となる。

閣議後には、ジョンソン首相が首相官邸でブリーフィングを行い、今後数カ月の間に大規模なイベントを開催するための「COVIDステータス証明書(COVIDパスポート)」の導入についてや、海外旅行が解禁された際に導入予定の、渡航先のリスクに合わせた「信号」システムについても説明する予定。

検査キットの入手方法

検査キットは9日から以下の方法で入手できる。

  • 地方自治体が運営する地域の検査場で受け取る
  • 特定の時間帯に近隣のPCR検査場で受け取る
  • 既存の職場での検査計画を通じて受け取る
  • オンライン注文し、郵送で受け取る
  • 検査計画に参加している地域の薬局で、検査キット1箱(7回分)を受け取る

陽性の場合は

「ラテラルフロー」検査で陽性と判定された人は、家族と共に自己隔離することとなる。その後、通常は症状のある患者に使用されるPCR検査を発注し、検査機関で結果の分析を行う。

この確認検査で陰性になれば、隔離期間は直ちに終了し、日常生活に戻ることが出来る。

イングランド公衆衛生庁(PHE)のCOVID-19戦略対応ディレクター、スーザン・ホプキンス博士は、迅速検査では他の方法では発見されない感染者を見つけられる可能性があるとし、感染の連鎖を断ち切り、新型ウイルスの変異株や突然変異の拡大抑制に役立つと述べた。

Year 11 students taking lateral flow tests at Herne Bay High School

画像提供, Reuters

画像説明, 「ラテラルフロー」検査を受けるイングランドの中・高等学校の生徒

ハンコック保健相は、「COVID-19に感染しても3人に1人は無症状だ。私たちが社会を取り戻し、失った生活の一部を再開する中、陽性者を迅速に発見し、大規模な感染を食い止めるために定期的な迅速検査は欠かせない」と述べた。

最大野党・労働党のジョナサン・アシュワース影の保健相は、検査計画の拡大には、市民が自己隔離できるような経済支援が必要であると述べた。そして、「適切な傷病手当と支援の欠如が、この恐ろしいウイルスに対する防御体制における危険な落とし穴になっている」と付け加えた。

「偽陽性」をめぐる懸念

最新のデータによると、3月18日から同24日までの1週間に学校や大学で実施された約420万件の「ラテラルフロー」検査のうち、4502件が陽性と判定された。

公衆衛生が専門のニューカッスル大学のアリソン・ポロック教授は、「大規模なウイルス検査はとんでもないお金の無駄遣い」だと指摘する。

「新型コロナウイルスの有病率が現在のように低下すると、偽陽性となるケースの割合が増え、陽性判定された人とその接触者が不必要に自己隔離されることになる」

ポロック教授は大規模検査は「有害無益になる」可能性が高くなるとしている。「政府による大規模検査計画の評価が確認できていないので、英国スクリーニング委員会に助言を求めるべきだ」。

英政府は最近になってイングランドの政策を変更し、中・高等学校の生徒が最初の迅速検査で陽性と判定された場合に、PCRなどを使った2回目の検査を受けることを義務付けた。

これは、学校へ戻ったばかりの生徒が不必要に自己隔離していると、保護者や科学者が警告を発したことを受けてのもの。

政府は、迅速検査1000件あたりの偽陽性の数は1件未満だとしている。

北アイルランド保健当局は最近、迅速検査の対象を50人以上のスタッフを抱える民間企業にも拡大し、「ほかへの検査提供も検討するかもしれない」としている。

スコットランド自治政府は有病率の高い地域で無症状者を見つける、迅速検査の範囲を病院や介護施設、学校や地域社会に拡大。イングランドの発表の「意味合いを考慮」しているとした。

ウェールズ自治政府は、人口の22%がすでに定期的な迅速検査を受けられるようにしており、今後は職場や地域に拡大していくとしている。