参院選、自民単独で改選過半数 改憲勢力が定数の3分の2以上に

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画像説明, 各地の投票所では新型コロナウイルス対策が取られる中で有権者が票を投じた

日本の参議院選挙が10日投開票され、自民党は改選124議席の過半数(63議席)を単独で獲得した。与党の自民・公明両党で、非改選の70議席を合わせて定数の過半数(125議席)を超えた。与党両党に日本維新の会、国民民主党などを含めた「改憲勢力」は93議席となり、非改選議席を合わせると改憲の国会発議が可能となる定数の3分の2以上の議席を占めることとなる。

今回の参院選では、物価高への対策や安全保障政策などが主な争点とされた。選挙期間中の8日には、安倍晋三元首相が街頭で応援演説中に銃撃され死亡する事件が発生。衝撃が残る中で、有権者が票を投じた。

改選124議席に神奈川選挙区の欠員補充1議席を合わせた125議席が争われた。

NHKなどの国内メディアは11日朝までに、自民党が単独で改選議席の過半数を獲得して大勝したと伝えた。

一方の野党では、最大勢力の立憲民主党が改選23議席を下回り、17議席にとどまった。国民民主党は改選前の7議席から5議席となった。日本維新の会は12議席と、改選前の2倍に伸ばした。

共産党が4議席、れいわ新選組が3議席、社民党が1議席、NHK党が1議席、参政党が1議席、無所属が5議席となった。

改憲に前向きな自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党は、今回の選挙で計82議席を取れば、非改選84議席と合わせ、参院の定数248議席の3分の2以上となり、改憲の発議が可能になると注目されていた。結果として、4党は今回の選挙で93議席を得て、非改選議席と合わせて、改憲発議に必要な議席を得た。

ballot counting

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画像説明, 東京の開票所での開票作業(10日)

自民党の茂木敏充幹事長は、NHKの午後9時半前のインタビューで、安倍氏の死去と、今回の選挙の受け止めについて問われると、「今回のテロ事件、深い悲しみと共に強い憤りをもっている。(中略)われわれは悲しみを乗り越え、最後まで戦い抜いた。安倍元総理にいい結果が報告できればと思っている」と述べた。

与党で改選議席を上回る情勢については、「日本を守る、未来をつくる、この選挙公約を掲げて戦ったが、国民のみなさんから評価されたのが大きかったと思う」とした。

また、改憲については、「今の段階では、できるだけ早いタイミングで、ということに尽きる。まずは憲法改正原案の国会提案、発議を目指すにあたって、憲法改正に前向きな政党の間で、どの項目を優先し、どういったスケジュールで進めていくのか、認識の共有を図ることが重要だと思っている」と話した。

「改憲発議できる案をまとめたい」

自民党本部では午後9時45分ごろ、安倍氏への黙とうが捧げられた。その後、岸田文雄首相が、当選確実と報じられた候補者の名前の横にピンクのバラをつけた。

岸田氏は午後10時過ぎ、NHKのインタビューに応じ、安倍氏が凶弾に倒れたことについて、「暴力によって民主主義の基盤である選挙のありようが問われている。なんとしてもこの選挙を完結させなければいけないという思いで、多くのみなさんの協力をいただいた。完結できたことは大きな意味があると思う」と述べた。

今回の結果を受けて、政策で「岸田カラー」を強めるのかと問われると、「コロナ、ウクライナ、物価高騰対策、こうした大きな課題に向けてしっかり取り組んだうえで、日本の経済再生に向けて努力をしていかなければならないと思っている」と答えた。

改憲については、「自民党が4つのたたき台素案は、どれも現代的な喫緊の課題だ。国会での議論が活発化してきた。国民の理解を得て、国民投票に付さなければいけない憲法改正の手続きなので、まずは国会において憲法の議論をさらに深めることによって、具体的な発議できる案をまとめていきたい」と述べた。

最大野党の民主党は

一方、立憲民主党の西村智奈美幹事長は、NHKの午後9時半前のインタビューで、議席を減らすのが確実視されている状況をどう受け止めているかと聞かれ、「議席が伸び悩んでいるという状況ではあるが、いま開票が進んでいるので、1票でも多く、1議席でも多く獲得できるように、状況を見守っていきたい」と答えた。

党勢をどう立て直すのかとの問いには、「結果をみながら、今後の対応を考えていくことになると思う」と述べるにとどめた。

同党の泉代表は午後10時過ぎのNHKのインタビューで、議席が伸び悩んだ原因を問われると、「6年前の参院選と比べ、野党の状況がずいぶん変わった。それぞれが、なかなかまとまれない状況が続いていた」と述べた。

朝日新聞によると、総務省が発表した午後7時半の投票率は30.61%。前回2019年参院選の同時点と比べて0.50ポイント高いという。この投票率には、期日前投票や不在者投票、在外投票は含まれていないという。